資金繰り表の役割と正しい作成手順とは?

中小企業経営者の悩みのタネとして資金繰り・資金調達があります。

 

豊富な資金を持って経営している中小企業は少ないので、銀行融資などを利用して資金ショートを避けている中小企業が多いことでしょう。

 

「資金繰り表」は資金調達を計画的にするだけでなく、銀行融資でも役に立つので経営者におすすめのツールです。

 

今回は資金繰り表の作り方から活用法まで解説しましょう。

 

 

資金繰り表の作り方

まずは簡単な資金繰り表を自社のデータを元にして作ってみましょう。

 

日本政策金融公庫のホームページにもエクセルのテンプレートがあるので、それを元にして作成の手順を解説しましょう。

 

資金繰り表の内容

資金繰り表では収入と収支を記載して、必要な資金がどれくらいあるかを明確にすることが必要です。

 

さらに長期と短期の借入によって必要な資金を調達した場合の返済金も明確にします。

 

下図を参照して自社の数字を当てはめてみましょう。

 

資金繰り表

 

資金繰り表作成手順

資金繰り表は将来の資金繰りの予定表なので、元になる数字は予測数字であることを覚えておきましょう。

 

それでは表の上から順に記載内容と記載方法を解説していきましょう。

 

・収入欄

  1. 売上高、仕入・外注費は前年同期を参考にして予想数字を記入します。期中に作成する場合は実績も含めて記載します。
  2. 前期繰越現金・当座預金は前期決算書や総勘定元帳などから現金・預金残高を記入しましょう。
  3. 売上代金の項目、「現金売上・売掛金現金回収・手形期日落・手形割引」もそれぞれ実績と予測数字を記入します。
  4. その他収入には、「受取利息・配当」「前受金」「固定資産等の売却」「定期預金取り崩し」「増資」などの予測を記入します。

 

・支出欄

  1. 仕入・外注費や経費も予想収入から必要となる支払金額の数字を記入していきます。
  2. 仕入・外注費、経費以外の支出には、たとえば「税金」「役員賞与」「前渡金」「固定資産等の購入」などを記入します。

 

収入と支出の予想金額を記入したら、次は財務欄の金融になりますが、財務欄が資金繰り表では大事な部分になります。

 

財務欄の記入

収入と支出を全て記入すると、「差引計(D)」に、エクセルでは自動的に数値が表示されます。

 

これは前期繰越分(A)に収入(B)を加えたものから支出(C)を差し引いた数字です。

 

これがマイナスになっているとその金額だけ資金ショートすることになるので、資金調達金額と時期が明確になります。

 

そこでもともと予定していた借入金を含めて新規借入予定額を記入します。

 

返済欄も新規借入分も含めて記載しましょう。

 

資金繰り表の種類

これまで作り方を解説した資金繰り表は簡易版で、初めて作る場合や小規模事業主のための資金繰り表です。

 

最初は簡易版で慣れておいて、より詳細な資金繰り表やキャッシュフロー計算書に基づいた資金繰り表も作ってみましょう。

 

自社の業種に適した資金繰り表を作ることも大切です。

 

詳細な資金繰り表

簡易版では収入も支出も一時的なものも含んでいるので、より細かい分析をするためには収入と私出を経常・経常外に分けて表示しましょう。

 

また財務欄も借入金だけでなく「財務収支」としてより詳細に記入します。

 

具体的には下記の項目を参照してください。

 

 

上記のように詳細に資金繰り表を作成することで、常に資金調達が必要な原因が明らかになるので対策が立てやすくなります。

 

資金繰り表とキャッシュフロー計算書

まずは簡単に資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違いをまとめてみましょう。

 

資金繰り表

・会社の将来の資金繰りを予測する目的で作成する
・日単位から週単位、月単位と年度に関係なく事由に作成できる
・最終的に資金残高がマイナスにならないことが目的

 

キャッシュフロー計算書

・過去の一定期間の現金の流れをまとめたもの
・四半期・半期・事業年度単位で作成
・結果がマイナスでも問題なく、マイナスの原因が重要となる

 

キャッシュフロー計算書では「営業」「投資」「財務」それぞれの部門でのキャッシュの増減を表示した計算書です。

 

これによって現金の増減の原因を明らかにすることができます。

 

このキャッシュフロー計算書を元にした資金繰り表も作成できます。

 

なおキャッシュフロー計算書の具体的なサンプルは中小企業庁のホームページで確認できます。

 

キャッシュフロー計算書ベースの資金繰り表

キャッシュフロー計算書ベースの資金繰り表では各項目は次の通りになります。

 

▼営業収支
・収入:現金売上・売掛金回収・手形期日入金・受取手形割引・その他収入
・支出:現金仕入・買掛金支払・支払手形決済・人件費・諸経費・支払利息・法人税支払・その他支払

 

▼投資収支
・収入: 固定資産売却・貸付金の減少・その他収入
・支出:固定資産購入・貸付金の増加・その他支出

 

▼財務収支
・収入:借入金・定期預金取り崩し・その他の財務収入
・支出:借入金返済・定期預金預入・その他財務支出

 

資金繰り表のチェックポイント

▼営業収支がプラスになっているか
営業収支がプラスでないと設備投資も借入返済もできません。
営業収支がトータルでマイナスでは銀行融資などに頼る経営となるため、営業収支のプラスを最大の目標にしましょう。

 

▼預金残高と月商の比較
月商程度に預金残高が維持できていれば、資金繰りを気にせずに経営できる目安となります。
月商3ヶ月分であればさらに理想的です。

 

▼借入金返済額と営業収支の比較
借入金の返済額が営業収支を上回っていると、収支が常にマイナスとなります。
借入先に返済条件の変更などを依頼して改善するようにしましょう。

 

▼設備投資額と売上・利益のチェック
設備投資額は高額となるので、金融機関が長期借入をすることになり、長期に渡って収支に影響することになります。
設備投資を検討するときは売上や利益予測を慎重にしましょう。

 

資金繰り表の活用

資金繰り表を具体的にどのように活用するのかを解説します。

 

そもそも何のために作るのか、どんな場合に資金繰り表が必要となるかを知っておくことは大切です。

 

資金繰り表が必要なケース

一般的に資金繰り表が必要となる場合には次のケースがあります。

 

▼複数の預金口座がある
口座間の資金移動を忘れないために、日次の資金繰り表を作りましょう。

 

▼入出金のズレがある
売掛金の入金と買掛金の支払にずれがある場合は、損益計算書の利益と現金収支が一致しません。
月次の資金繰り表を作成することで、利益は出ていても資金ショートになることを防止できます。

 

・金融機関の借入に使う
銀行融資を受ける場合は、資金使途の根拠や将来の売上予測を銀行に説明する必要があります。
口頭で説明するよりも資金繰り表を提出すると説得力があります。

 

・予算案を作る資料とする
一般的な企業では毎年定期的に予算案を作成しますが、そのときに併せて資金繰り表を作成するのが一般的です。

 

黒字倒産を避ける

損益計算書を見ればその企業の利益がわかりますが、損益計算書で利益が出ていても必ずしも経営がうまく言っているとは限りません。

 

損益計算書では売掛金もプラスとして計算されているので、実際の現金収支とは違いがあります。

 

特に売掛金と買掛金の多い会社では、売掛金が現金化するまでに買掛金の支払いが生じると、資金ショートになります。

 

そのため黒字でも倒産に陥ることがあるのです。

 

資金繰り表を常に作成しておくことで、資金不足を事前に把握することができ、黒字倒産を防止することができます。

 

資金繰り悪化を改善

黒字倒産に至らないまでも資金繰りの悪化を防止する意味でも資金繰り業が役立ちます。

 

資金繰り表で慢性的に資金ショートとなっている場合は、次の対策を講じて資金繰りの改善に努めましょう。

 

▼売掛・買掛の条件改善
売掛金の回収期間は短く、買掛金の支払期間は長くするのが基本です。
しかし取引期間が長い取引先に条件交渉をすること自体信用を失うことがあります。
新規取引先から交渉するといいでしょう。

 

▼在庫の見直し
在庫回転期間(棚卸資産回転数)をチェックして回転率が悪化傾向にある場合は、適正な在庫量に調整しましょう。
在庫回転日数=棚卸資産÷売上原価÷365日

 

▼経費の見直し
経費の見直しは常に考えておきましょう。
賃料は、周辺の相場と比較して高い場合は大家に交渉すると、移転されるよりは引き下げに応じるというケースはよくあります。
最も負担となるのは人件費ですが、従業員給与に関してはすぐには引き下げず、役員報酬の引き下げをしてから理解を得ましょう。

 

▼リスケジュールの利用
銀行融資や保証協会付きの融資でも、返済期間の延長などの交渉をすることができます(リスケジュール)。
ただし、リスケジュールをすると銀行の格付が下がり次の借入に影響します。
リスケジュールは最後の手段にしましょう。

 

まとめ

資金繰り表作成の意味と重要性はお分かりいただけたでしょうか。

 

経営者としては資金繰り表を作るだけではなく、活用することに意味があります。

 

経営に活かすことはもちろんですが、銀行融資を有利にするツールとしても活用しましょう。

 

まだ、資金繰り表を利用していない経営者の方は、この機会に作ってみてはいかがでしょうか。