個人事業主として開業するには

最近では個人で事業を始めるには最適な環境がそろっています。特にネット環境を利用すれば個人でも全国的な事業展開が可能です。

 

サラリーマンの副業や主婦の内職もネットを利用して簡単に始められる物が増えています。個人経営者やフリーランスといった職種は確実に増えてきています。

 

しかしたとえ副業であっても、継続的に収入がある場合、法律上は個人事業主という扱いになり、各種手続きや課税などがあります。
それまで全く事業をしたことがない人が、個人事業主として開業するのですから開業に必要な知識もまったくないのが普通です。

 

今回は個人事業主の開業について必要な手続きから、税金や経費までを解説します。

 

 

 

個人事業主になるために必要なもの

実は開業すること自体さほど難しいことはなく、基本的には税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけで問題ありません。

 

個人事業主として開業するための必要書類は、以下の2つだけで簡単に事業を始めることができます。

 

・個人事業の開業・廃業等届出書(開業届け)
・所得税の青色申告承認申請書

 

開業する際に最低限必要なのが税務署への開業届けであり、開業後も事業拡大として新しい事務所や新規店舗の追加する場合や移転の際にも税務署に申請する必要があります。
※廃業の場合も税務署に廃業届けで申告

 

開業届は必ず必要?

個人事業を始める場合には税務署に開業届を提出することが義務付けられています。この提出は必ず必要なのか?いつまで届けるのか?メリットはあるのか?と言った疑問があるでしょう。

 

まずはこの開業届に付いて詳しく解説しましょう。

開業届け出手続きが必要な理由

開業届出書は正確には「個人事業の開廃業等届出書」という名称で、事業を開始した場合や事業所等を開設等した場合に税務署に届け出をします。

 

名称の通り開業以外に廃業した場合にも届け出が必要です。この届出が必要な理由は国税庁が事業者に対して課税しやすいように、課税対象者を特定するためです。

 

しかし、現実的には開業届をせずに事業を行っている人はたくさんいます。こうした場合に罰則はあるのでしょうか?結論を言えば白色申告(後述)の場合は開業届をしなくても問題ありません。
ただし、個人事業主が開業届をしない場合は白色申告しかできず、青色申告(後述)による節税のメリットを受けられないのです。

 

また、開業届は開業から1ヶ月以内となっていますが、この期日を守らなければどうなるでしょうか?
実は開業してから白色申告をしていれば届け出は何年後でも構いません。

 

開業日を実際の日付にして提出すればよいのです。青色申告をするには開業届けが必要なので、白色申告から青色申告に切り替えるときに青色申告承認申請手続と同時に開業届をすれば問題ありません。
なお、各種申請書・申請用紙は税務署に備え付けてありますが国税庁のホームページでもダウンロードできます。

 

所得税の青色申告について(国税庁HP)

 

提出先は事業を営む所轄(納税地)にある税務署になります。

 

持参、郵送、またはホームページからの電子申告などの提出方法がありますが、中でも、確実な提出方法は税務署へ直接の持参であり、提出の際に記入漏れがないかの確認や質問もできます。

 

郵送では出向く手間は省けるものの、郵送に時間がかかりますし、万が一、書類に不備があっては時間も無駄になってしまいます。

 

また、実際に原本のコピーなどを控えるためにも可能であれば持参したいところです。

開業届のメリット

開業届出をするメリットは青色申告ができるということにつきます。反対に青色申告をするためには開業届が必須となります。

 

青色申告できることが、なぜメリットになるかというのは後で詳しく解説しますが、簡単に言えば所得控除や認められる経費が白色申告よりも多いということです。

 

つまり青色申告をしたほうが同じ売上であっても支払う税金が大きく違うことになります。制度自体は国税庁の都合によるものですが、届け出には個人事業者にもメリットが有るのです。

 

開業届のデメリット

会社を退職して個人事業を始めようという場合、当面は失業保険を利用して雇用保険の基本手当をもらうことになります。
この基本手当をもらう条件として再就職の意思があるということが必要です。開業届を提出すると再就職の意思がなく、自分で事業を始めることを宣言しているのと同じです。
その結果基本手当は打ち切られてしまいます。事業を開始するのは基本手当の受給期間が過ぎてからにして、それまでは事業開始の準備をするといいでしょう。

 

青色申告と白色申告の違い

個人事業主になると所得申告は自分で行わなければいけません。給与所得者であれば所得税は源泉徴収されて、年末調整をするだけで終わっていましたがこれからは全部自分で確定申告を行うということを意識しましょう。
確定申告期限は毎年3月15日ですが休日などの寄ってずれ込むことがあるので、税務署で確認しましょう。

 

また、開業時にやっておきたいのは屋号を付けておくことです。
もちろん、無理につける必要もなく、屋号がない場合は個人名での事業として扱われるようになるだけです。

 

屋号は法律で守られるものではありませんが、いわば事業の看板となるため、事業内容などを対外的にもイメージを持ってもらいやすくなります。

 

後に法人化をするときに、同じ屋号を使いたいのであれば、事前に屋号を商号登録しておくなどの対策も必要になる点には注意が必要です。

 

他にも、事業を開始する際には、どんなサービスを提供しているのか内容を周知するためのサイトを制作しておくのも効果があると言えますね。

 

個人事業主の屋号取得ポイント

 

なお、事業主として必ず知っておきたいのが確定申告には「白色申告」と「青色申告」があり、開業届けをすると青色申告ができる資格を得られます。
と言っても必ず青色申告をする必要はなく、白色申告をしても構いません。
2つの申告方法の違いやメリットを考えてどちらにするか決めましょう。

 

白色申告のメリット・デメリット

白色申告は300万円未満の所得であれば「記帳」と「帳簿等書類」を保管する義務はありませんでしたが、平成26年1月からはこれらが義務付けられています。

 

これによって白色申告最大のメリットであった簡便さがなくなってしまいました。平成28年10月時点で残っているメリットは次のとおりです。

 

■白色申告のメリット
1.開業届の必要がない
2.記述の簡単な単式簿記による記帳

 

白色申告メリットは記載が簡便だという点ですが節税につながるメリットもあります。
それが「事業専従者控除」です。家族を事業専従者とすることで最大86万円の控除が受けられるしくみです。
事業専従者にすることができる条件は次のとおりです。

 

■事業専従者の条件
1.生計をともにする配偶者または親族(親、子供など)
2.申告年度の12月31日時点で15歳以上
3.年間6ヶ月超事業に従事している

 

こうした条件を満たす家族を専従者として申告すると配偶者は最大86万円、配偶者以外は50万円までの控除を受けることができます。
控除金額は税金の対象となる所得金額から差し引かれるので、それだけ支払う税金が少なくなります。

 

ただし、専従者として申告すると配偶者控除や扶養控除の対象外となるので気をつけましょう。

 

青色申告のメリット・デメリット

青色申告は白色申告と比べると申告書の作成や普段の帳簿の付け方が面倒ですが、節税メリットは大きくなります。
慣れるまでは白色申告をして途中で切り替えるという方法もありますが、最近では優秀な会計ソフトもあるので、最初から青色申告するのもおすすめです。

 

ちなみに青色の意味は澄み切った空のイメージから来ているようです。白色申告は正式な名称ではなく青色ではないという程度の意味です。
白色申告から青色申告に切り替える場合は、開業届の他に「青色申告承認申請書」も提出して申請します。

 

青色申告を選択すると青色申告特別控除が認められます。これには10万円の特別控除と65万円の特別控除の2種類があります。
複式簿記での記帳をすると自動的に65万円控除となりますが、申告期日を1日でも遅れると10万円控除になってしまうので気をつけましょう。
青色申告にこれ以外にも次のようなメリットがあります。

 

■青色申告のメリット
1.赤字を最長3年繰越できる
2.青色申告専従者給与には控除の上限がない(白色は最大86万円)
3.「少額減価償却の特例」で30万円未満の資産購入は一括で経費にできる
4.公共料金・家賃などを「家事按分」して経費にできる(自宅兼事務所などの場合)

 

「経費」は事業に必要な支出のことで課税対象外となります。つまり同じ支出をするのであれば経費として計上できるものが多ければ節税になります。
青色申告では白色申告に比べて経費計上できる金額が大きくなり、白色申告では認められていないものも経費とし計上できるメリットがあります。

 

■青色申告のデメリット
青色申告のデメリットというよりも青色申告をするためのハードルといったほうが良いかもしれません。
白色申告と違って帳簿の付け方は正規の簿記原則に従って行う必要があるので、始めての人にとってはハードルが高いと言えるでしょう。

 

しかし初めてだからこそきちんと帳簿付けをするというのは重要なことです。会計ソフトを利用すれば初めてでも簡単に帳簿付けができます。
青色申告にはそうするだけの節税メリットがあります。

 

■白色申告から青色申告への切り替え
白色申告から青色申告に切り替える場合は、開業届の他に「青色申告承認申請書」も提出して申請します。
提出期限は3/15となっているので、期限をすぎると青色申告は次年度からになってしまうので注意しましょう。

 

経費を上手に活用して節税しよう

給与所得から個人事業主になる場合、今まで全く意識していなかった「経費」を充分に理解する必要があります。

 

普段から経費を意識して領収証を保管するといった事が必要で、こうしたことが一つ一つ節税につながっていきます。

 

また、サラリーマン時代では勝手に差し引かれていた税金に対する知識や意識も必要です。

 

個人事業にかかる4つの税金と節税対策

個人事業主には4つの税金がかかります。これらの税金について解説しましょう。

 

■所得税
国税の所得税には次のような区分があります。

 

利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得

 

個人事業主に直接観家があるのが「事業所得」です。事業所得は「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業」から発生する所得のことです。
課税される所得金額に応じて課税率と控除額が決められています。

 

事例をあげると300万円の所得の場合課税率10%、控除金額97,500円となるので次の計算となります。
3,000,000円×10%−97,500円=202,500円(所得税額)

 

■住民税
住民税は地方税で確定申告をすると自動的に所得金額応じて市町村から通知されます。

 

■個人事業税
個人事業税も地方税で、住民税と同様に自動的に通知されます。一律に控除金額が決まっていて290万円が控除されます。

 

■消費税
消費税は本来消費者が負担する国税ですが、事業者はこれを預かり国に納付する義務を負っています。

 

ただし前年の課税期間6ヶ月間で売上高1,000万円以下の事業者は「免税事業者」として課税されないので申告も不要です。
なお、同期間中の従業員給与が1,000万円を超えると課税事業者となります。

 

個人事業主が納めるべき税金と節税法

 

経費と個人消費の使い分け

所得税は事業所得に対してかかリます。売上金額−経費=所得となるので経費金額が大きいほど税金を低く抑えることができます。

 

その為普段から経費を意識して、領収書をもらい保管する癖をつけておきましょう。経費を申告し忘れるだけで余計に税金を支払うことになります。

 

また、個人事業主の場合は個人消費と経費を混同しやすいので気をつけましょう。いくら経費が多いほうが節税になるといっても、生活に必要の消費までは経費になりません。
ただし自宅で仕事をしている場合は「家事按分」が認められるので、事業用の経費として一部申告できます。

 

それでは具体的に経費にはどのようなものがあるのか見てみましょう。

 

■主な経費
帳簿づけするときに分類するための経費科目には次のようなものがあります。

 

給料賃金・外注工賃・減価償却費・繰延資産の償却費・地代家賃・利子割引料・水道光熱費・旅費交通費・通信費・広告宣伝費・消耗品費・専従者給与

 

よく利用する経費としては通信費があります。電話、携帯電話、プロバイダー料金などが通信費となります。
また仕事をする上で必要なパソコン関連用品、備品は1年未満の使用や10万円未満は消耗品費として経費扱いです。
事務用品費と紛らわしいですが、一度決めた経費科目は途中で変えずに一貫して使いましょう。

 

また、10万円以上は資産として扱われるので、一括ではなく分割して減価償却費という経費科目になります。

 

個人事業主の経費計上について

 

まず開業にあたっての心積もり

ずっと夢だった独立・開業の実現に向けて動き出す前に、開業するとどういった状況になるのかを事前にシッカリとイメージしておくことが重要です。

 

例えば、今まで会社に勤められていた方であれば、毎月の給料日には自動的に一定の収入が銀行口座に振り込まれていたと思います。

 

しかし、独立して自営者になってしまうと決まった収益というのが見込めなくなります。

 

早く事業を軌道に乗せて、利益を上げなければ、誰も自分に給料を支払ってはくれませんので生活の維持が難しくなります。

 

なので、独立する前に事業収入が安定するまでの備えとして、最低でも半年分(できれば1年分)ぐらいの生活費は貯蓄しておくことが大切です。

 

さらに、今まで総務部や経理部に任せていた税金や保険の対応など、全て自分で行わなければなりません。

 

いつでも相談できる外部の専門家を見つけておくことが大切です。

 

また、独立すれば毎日、決まった時間に会社に出勤する必要はありませんが、個人事業とはいえ、会社の経営者と同じ立場です。

 

自分自身が事業を動かさないと収益・売上を生み出せないのが個人事業主であることをキモに命じておかなければなりません。

 

まとめ

個人事業主として独立ときの法手続きはほとんどありません。特に白色申告をするのであれば事業届でも必要ないので、準備さえ整えばいつでも事業経営ができます。

 

しかし、将来を館得るのであれば、きちんと事業届け出をして青色申告をすると税金面で大きなメリットを得ることができます。

 

また事業を始める前に経費・税金といった今まであまり意識していなかった点についてよく勉強する必要があります。

 

今回お届けした情報は決して全てではありません。今回の情報をきっかけに疑問に思った点、もっと知りたい点は自分で調べるくらいの意識は必要です。
そうした意識は実際の事業運営でも役に立つでしょう。