法人は総量規制の例外になる!ただし、経営者が個人名義で借りる時は注意

貸金業者を規制対象とした改正貸金業法が施行されてから、だいぶ時間も経過しましたが重要な規制のひとつに「総量規制」があります。

言葉は聞いたことがあるけれども詳しく説明できない、という人も多いのではないでしょうか?

そもそも総量規制とはどのような意味があり、具体的に貸金業者はどのような規制を受けているのでしょうか?

今回は総量規制の内容や利用者がどのような点に気をつければいいのかを解説しましょう。

総量規制とは?

総量規制という言葉は貸金業界だけに使用される言葉ではありません。

広い意味では、どの業界に対しても使われる可能性がある言葉で、国がその業界に対して規模を縮小させるために規制した場合に使われます。

それではなぜ貸金業界に総量規制が適用されたのでしょうか?

貸金業界の総量規制

貸金業に対して行われた総量規制は、具体的には個人に対する貸付金額の上限を年収の1/3にするというものです。
貸付上限と同時に、出資法の貸付金利の上限も引き下げられ、利息制限法と同じになりました

なお出資法と利息制限法の上限金利は、以下のように貸付金額によって定められています。

10万円未満:年20.0%
10万円以上100万円未満:年18.0%
100万円以上:年15.0%

貸付金利が引き下げられた上に貸付金額も縮小されたため、貸金業界全体の取扱金額は激減し、過去に存在していた個人の貸金業者はほとんど廃業しています。

それだけ総量規制を含む貸金業法の改正は、貸金業界にとって大きな影響があったのです。

年収の1/3はどこまでの範囲?

年収の1/3までの借入総額が貸付上限となっていますが、1/3には何が含まれるのでしょうか?

基本的には貸金業者が貸付をした融資残高はすべて含まれます。

もっと具体的には以下の融資が対象となります。

消費者金融会社などノンバンクが貸付したローン残高
ノンバンク発行のカードローンの利用枠(残高がなくても含まれる)
クレジットカードのキャッシング枠(残高がなくても含まれる)

ノンバンクは銀行以外で貸付業務をしている業者の総称で、貸金業者と同じ意味になります。
銀行に関しては貸金業法ではなく銀行法で管理されるので、貸金業法の規制はうけませんが、最近では自主的に総量規制を意識した動きも見せています。

銀行カードローンはほとんどが保証会社付きとなっていて、保証会社は貸金業法の規制対象となるノンバンクですが、貸主は銀行であるため銀行法よって管理されます。

なお、貸金法の規制対象となる業者には消費者金融以外に下記の業種も含まれます。

・クレジット会社
 ※ただしショッピングローン、自動車ローンを除く
・クレジットカード会社
 ※ショッピングローンを除く
・上記以外の銀行や信用金庫を除く金融業者
 ※融資事業のあるリース会社など

総量規制の例外と除外

銀行以外から借りたローンや融資はほとんど対象になりますが、総量規制には例外や対象外も数多くあり、総量規制の対象外となる融資は「例外」と「除外」に分けられます。

「例外」は条件付きで総量規制の対象外になり、「除外」は最初から規制の対象外となる融資のことを指し、例外と除外の代表的な内容とその理由についても解説します。

総量規制の例外
1.顧客に一方的有利となる借り換え
2.緊急の医療費の貸付
3.社会通念上緊急に必要と認められる費用を支払うための資金の貸付
4.配偶者と併せた年収の3分の1以下の貸付
5.個人事業者に対する貸付
6.預金取扱金融機関からの貸付を受けるまでの「つなぎ資金」に係る貸付
顧客に一方的有利となる貸付

顧客に一方的有利の具体例としては、「借り換えローン」などが総量規制の対象にあたります。
おまとめローンを含む借り換えローンはすでに借入している融資を低金利の融資に切り替えるのが目的です。

あるいは複数の融資を一本化して支払いやすくするというケースもあります。いずれの場合も既存の融資残高はなくなり、利用者のメリットが大きいため例外となります。

緊急の医療費と緊急に必要と認められた費用支払いのための貸付

緊急を要する融資を規制対象とすることで、利用者により大きな損害を与えることが考えられるため例外としています。

配偶者と併せた年収の3分の1以下の貸付

一般的に「配偶者貸付」と呼ばれる内容は法的に認められています。

これは収入のない主婦(主夫)が、配偶者の承諾や収入証明書、住民票か戸籍抄本の提出などの条件を満たすことで配偶者の収入と合算し、その1/3までの貸付可能とするもの。

ただし、ほとんどの大手消費者金融会社では取り扱っておらず、銀行でも制限する動きがあります。

預金取扱金融機関からの貸付を受けるまでの「つなぎ資金」に係る貸付

の「つなぎ融資」に関してはすでに銀行融資が決定していて、銀行融資の実行によって相殺されるので、実質的には利用者の負担は利息だけとなります。

返済財源の根拠が規制対象外の銀行融資ということもあり、例外となっています。

総量規制の除外
1.不動産購入または不動産に改良のための貸付
 ※そのためのつなぎ融資を含む
2.自動車購入時の自動車担保貸付
3.高額療養費の貸付
4.有価証券担保貸付
5.不動産担保貸付
6.売却予定不動産の売却代金により返済できる貸付
7.手形の割引
 ※融通手形を除く
8.金融商品取引業者が行う500万円超の貸付
9.貸金業者を債権者とする金銭貸借契約の媒介

総量規制の除外となる貸付は、基本的に担保を提供する融資(不動産担保ローンなど)となりますが、その理由は高額な借入でも担保を処分することで、利用者に大きな負担がかからないからということになります。

また、高額療養費の貸付のように総量規制の対象とすることで、利用者の生活に大きな影響を与える場合も除外となります。

総量規制の対象は個人だけ?法人や法人代表者は対象となるのか

総量規制の例外に個人事業主に対する貸付が含まれますが、これはどのような理由からでしょうか?
関連して法人や法人代表者に対する貸付についても解説します。

総量規制の対象は個人が原則

総量規制の対象は基本的に個人への貸付となるので、法人は例外なく対象外となります。

総量規制の目的は個人に対する借入残高が無制限に増え続けたため、多重債務者や自己破産者の増加を招くことになった経緯から、貸付の上限を設けて生活の破綻を防止するということにあります。

事業性資金の貸付は、企業利益に結びつくことや投資の意味もあるため総量規制の対象ではありません。

ただし、個人事業主が事業用資金として借入する場合に限り、個人として消費や生活資金を目的の借入では総量規制の対象です。

ところが個人事業主に貸付する場合は、事業資金と生活資金のどちらに使うか明確にすることは難しいため、カードローン使途には「事業資金以外」という条件が必ず付いています。

個人事業主も条件付きのカードローンを利用する場合は、年収1/3の規制を受けるので注意しましょう。

法人は規制対象外、では法人代表者は?

総量規制の趣旨を考えると、法人代表者も個人事業主と同じように事業資金に利用するのであれば規制対象外、個人利用は規制対象という考え方になります。

ビジネスカードローンの中には個人名義利用に限られるケースと、法人に限定している場合があり、法人名義で事業性融資を受ける場合は代表者が連帯保証人となるのが原則です。

連帯保証人は主債務者(法人)と同じ返済義務がありますが、総量規制の対象となるのはあくまで主債務者なので、保証人である代表者の借入残高は規制の対象にはなりません。

法人代表者が総量規制の対象になるのは、個人事業者と同じで生活資金や消費利用で貸付を受ける場合に限られます。

総量規制の対象となるのは、事業資金を資金使途として認めない融資を利用するときです。

法人代表者が法人審査に与える影響

法人申込の融資は法人代表者の年収や借入総額に関係なく、総量規制の対象外になりますが、法人代表者が原因で審査を通過しないケースはあるのでしょうか?

結論から言うと影響することはあります。
ただし、法人代表者の年収は総量規制に影響しません。そのため審査通過しない原因として挙げられるのは、法人代表者の過去の利用状況が大きく関わっています。

連帯保証人は主債務者の代わりに返済することを目的としてつけられているため、一定以上の返済能力がなければ連帯保証人としては不適格。

法人代表者が過去に金融事故を起こしていたり、現在未払いのローンがあったりした場合は、連帯保証人として不適格と判断される可能性が高くなります。

これによって法人申込が却下されたり、代表権のある他の役員に変更したりといったこともあり得ます。

法人ローンを利用しようと考えている代表者のかたは、借入前には個人の借入状況もしっかりとチェックください。

まとめ

総量規制は個人向け融資が対象で、法人は根本的に規制の対象外ということがおわかりいただけたでしょうか?

しかし消費者金融で法人融資を受ける場合は、法人代表者の個人的なローンやクレジットの利用状況が審査に大きく影響することもあります。

法人代表者の利用状況が影響するのは消費者金融だけではなく、銀行融資でも同じです。

法人の信用状況と経営者個人の信用状況は、融資に関してはまったく同じレベルで判断されると考え、経営者は個人の利用についても十分に注意を払いましょう。

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