手形割引とは?

手形取引は以前に比べて少なくなりましたが、最近では手軽な電子手形も流通していて手形取引が見直されています。

手形の振出は取引代金の支払を約束するもので、約束手形とも呼ばれていて、受け取った手形は債権として現金化したり、担保としてお金を借りたりできます。

手形割引は資金調達方法としても手軽で、会社経営者としては覚えておくべき方法です。

今回は基本的な手形のしくみとともに、「手形割引」という現金化の手段について解説します。

手形とは?

手形と同じようなものに小切手があります。
どちらも受け取った側が現金化できるという点では同じですが、大きな違いもあります。
手形と小切手を比較しながら手形のしくみを解説しましょう。

小切手はすぐに現金化できる

そもそも小切手は高額な現金を持ち歩かなくてもすむように考えられたものです。

そのためほとんど現金と同じ取り扱いになり、小切手を受け取ったら銀行ですぐに現金と引換ができます。

小切手を発行(振り出し)する側は、当座預金を開設し銀行から小切手用紙を受け取ります。

  • 金額
  • 振出日
  • 振出人

上記の項目が記載され他小切手に捺印することで、はじめて小切手として利用できます。
つまり小切手は現金取引を円滑にするために使用するということになります。

手形はすぐに現金化できない

手形が大きく小切手と違う点は振出日の他に支払日が記載されている点です。

つまり振出日から支払日までは、銀行に持ち込みしても現金化することができません。

小切手が現金取引用とすると、手形は売掛取引用の手段となります。

  1. 金額
  2. 振出日
  3. 支払期日
  4. 受取人
  5. 住所・氏名
  6. 銀行届出印を押す
  7. 10万円以上の場合は印紙を貼り、消印

上記のように小切手よりも記載項目が多くなり、現金化まで時間がかかるのが手形の特徴です。

手形はどのようなときに使うか

手形はすでに説明した通りすぐに現金が支払えないので、支払可能な時期まで支払を引き延ばすために使用します。
いわゆる売掛金の一種ですが、支払期日を約束した証書とも言えます。

そのため約束手形と呼ばれていますが、受け取った手形を「受取手形」、支払として受け渡した手形を「支払手形」と呼んでいます。
支払手形は現金が現在手元にないが、近い将来に確実に支払えるときに振り出すものです。

そのため将来の予定が狂ったときには手形が現金化できないリスクがあります。
つまり手形不渡りになる可能性もあるのです。

ちなみに6ヶ月間に2回手形不渡りを発生させた事業者は、銀行取引停止というペナルティがあるので注意しましょう。

取引手形と融通手形

取引手形は取引代金の支払に利用する手形ですが、取引の実態がない手形も存在します。
経営者同士で手形を振出、手形割引によって現金化し急場をしのぐという使い方をする手形です。

実質的には手形融通者が手形振出先にお金を貸している状況と同じになります。

経営の苦しい中小企業代表者や個人事業主などが融通手形の振出を依頼することがありますが、その場合はむしろ倒産が近いと判断しましょう。

取引会社に依頼されると断りにくいものですが、自社の社員を守ることを優先してきちんと断りましょう。

本来の手形は取引手形なので、融通手形のような取引実態がない手形の振出はやめましょう。

なお、為替手形という種類もありますが、輸出入や資金の取り立てで利用される特殊手形なので、今回の解説では触れません。

手形の裏書とは?

手形に関して裏書という言葉をよく耳にしますが、裏書とは何のためにあるのでしょうか?

裏書はその名の通り手形の裏側に記載されているものです。
簡単に説明するとその手形の権利者の履歴と言えるでしょう。

裏書には次の項目が記載されています。

  • 「表記金額を下記被裏書人またはその指図人へお支払ください」という文章
  • 譲渡先(被裏書人)の氏名
  • 譲渡元(裏書人)の署名・捺印

裏書には担保力もあるので、手形不渡りになった場合は裏書人に請求できる権利があります。

裏書人が複数でもいずれの裏書人にも請求できます。

裏書が途切れずに記載されていれば最終的な非裏書人に手形の権利が認められるので、手形を受け取るときには必ず裏書を確認しましょう。

手形割引で現金化

手形は一種の売掛金なので経営する上では早急に現金化するほうが、キャッシュフローの改善になります。
そのため手形を現金化する方法を学んでおくとよいでしょう。

手形割引のしくみ

手形を現金化する方法として最も一般的なのが手形割引です。
売掛債権を現金化する方法が「ファクタリング」とすると、売掛債権を担保にして融資を受けるのが「売掛債権担保融資」となります。

これを手形に置き換えると、手形割引はファクタリング利用と売掛債権担保融資利用の中間的な立場となります。
借入では亡きので返済は不要ですが、手形不渡りの場合は支払義務が生じるからです。

手形割引は銀行や業者に手数料を支払い、現金化するというのが基本的なしくみです。

しかし手形には不渡りのリスクがありますが、万一、不渡りとなった場合は手形割引利用者に請求が行われます。

つまり、せっかく現金化しても不渡りが発生すると銀行や業者に手形の振出金額を請求されます。

手形の金額を銀行に支払ってから振出人に不渡りの金額を請求することになるので、手数料を支払った上に請求コストまでかかります。
これが手形割引の最大のリスクと言えるでしょう。

しかし、手形割引をしなくても不渡りのリスクは常にあることを考えると、先に現金化できただけメリットがあったと考えましょう。
手形不渡りに対する対処は手形割引をしてもしなくても同じだからです。

手形割引はどこでするか?

手形割引ができるのは銀行や信用金庫などの金融機関と、民間の貸金業者となっています。

銀行で手形割引をしたほうが安全なイメージがあるが、不渡りリスクはどこを利用しても変わらないことを考えると、よりメリットがある業者を選んだほうがお得です。
銀行と業者の違いを簡単に説明しましょう。

審査 銀行では手形を持ち込んだ人(所持人)、業者は手形振出人の信用度を審査
割引手数料 銀行は比較的手数料が安いが、業者でも手形の銘柄によっては同じ程度の手数料となる
担保 銀行は手形持ち込み人の信用度が問題となるので、不渡りのリスク回避のために担保を要求することがある
現金化のスピード 銀行は2~3日、業者は即日現金化が原則

手形振出人に信用がある場合は業者に、持ち込み人の銀行取引が長く信用がある場合は銀行を利用するのが一般的でしょう。

業者を利用する場合は貸金業登録が長く信頼度が高い業者を選びましょう。

最初は大黒屋や入江倉庫など全国規模で長い業歴を持つ業者から選ぶのが無難です。

手形割引のメリットとデメリット

手形割引にはメリットやデメリットがあるので、利用する場合はこれらをよく理解してからにしましょう。

手形割引のメリットは現金化が早いという点です。
デメリットとしては割引手数料がかかるという点ですが、これらをあわせて考えることで、手形割引を利用したほうがいいかどうかを決めましょう。

はじめて手形割引を利用した場合、手数料は10%近くなることもあります。

支払日が3ヶ月後の100万円の受取手形を割引すると、手数料8%とすると、手元に残るのは92万円となります。
3ヶ月後には100万円となるものが92万円となるので、差額8万円を利息と考えると実質年率では32%と考えられます。

ノンバンクのカードローンでも最高年率18%なので、3ヶ月100万円借りても4万5千円の利息しかかかりません。

つまり割引手数料が高い場合はノンバンクのビジネスローンやビジネスカードローンを利用したほうがお得となります。

手形割引のメリットは手数料が低い場合に限られるということがわかるでしょう。

手形の仕訳

最後に売上代金として手形を受け取ったとき、仕入代金として手形で支払った場合の仕訳について解説しましょう。

●手形で売上代金を受け取った場合

貸方 売上   1,000,000円
借方 受取手形 1,000,000円

●手形で仕入代金を支払った場合

貸方 支払手形 1,000,000円
借方 仕入   1,000,000円

上記の通り売上の場合は受取手形、仕入の場合は支払手形の科目を使用するだけで、それほど難しい点はありません。

まとめ

手形取引はお互いの信頼関係に基づいて行われます。
手形で支払いたいと思っていても取引先が拒否すれば成立しないからです。

また手形割引も現金化が早くなるのでメリットがありますが、手数料次第ではもっとメリットのある資金調達方法もあります。

資金調達方法は一つだけではないので、急いでいる場合ほどもっと効率の良い調達方法を考えてみましょう。

それには普段から資金調達方法について学んでおくことが必要です。

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