法人税の計算方法と赤字の場合の対処法

一定以上の所得額があるすべての人に所得税の支払義務がありますが、これは会社や企業も例外ではありません。
法人の場合は所得税ではなく法人税と呼ばれていますが、法人の所得金額に対してかかる税金という点では所得税とまったく同じ意味を持ちます。

 

法人税の税率については、会社経営者だけでなく、法人化を検討中の個人事業主も気になるところでしょう。
今回は法人税の計算方法や赤字ケースの税金について、所得税との違いについて解説しましょう。

 

 

法人税の対象となる法人・団体

法人は「法人格」の略称で、本来人格を持たない組織に法律上の人格を認めたため法人格(法人)と呼んでいます。
なぜ人格を与えたのかというと、人格を認めないと法律上の行為、主に契約行為などを成立させられないからです。

 

法人にはいくつか種類がありますが、最も一般的な普通法人には以下の9つの法人があります。

 

・株式会社
・有限会社
・合名会社
・合資会社
・医療法人
・相互会社
・企業組合
・中間法人(労働組合、管理組合など)
・日本銀行

 

上記の9つの普通法人では、原則として所得のすべてが法人税の対象となります。
ただし資本金額1億円以下の中小企業には、例外的に軽減税率が適用されます。

 

次に、普通法人と対象的に「公共法人」と呼ばれる下記の法人がありますが、これらの法人は名称の通り公共団体なので、法人税の対象外です。

 

・地方公共団体
・日本政策金融公庫
・都市再生機構
・住宅金融支援機構
・日本下水道事業団
・雇用・能力開発機構
・国立大学法人
・日本中央競馬会
・日本放送協会
※旧公団で民営化されたJTや高速道路会社は法人税の対象

 

公共法人とおなじく以下の「公益法人」は原則として非課税ですが、収益事業を行っていればその利益は課税対象となります。

 

・社団法人
・財団法人
・宗教法人
・学校法人
・社会福祉法人

 

下記の「協同組合」等は基本的には営利団体として課税対象ですが、公共性もあるので軽減税率が適用されます。

 

・信用金庫
・農業協同組合
・漁業協同組合
・森林組合
・生活協同組合
・労働者協同組合

 

法人税は、その名称から法人だけが対象と思われがちですが、法人でなくても営利目的の団体であれば法人税の対象となります。
たとえば、PTAや同窓会などは法人ではありませんが、一定以上の収益があれば法人税の対象となります。

 

法人税の対象となる所得≠会計上の利益

課税金額を計算する場合、個人事業主の場合は収入から仕入金額や原価を差し引いた年間所得をまず計算します。
そして、この所得からさらに所得控除を差し引いたものが課税所得になります。

 

法人の場合も考え方は同じですが、対象となる所得は会計上の利益とは必ずしも一致しません。
たとえば法人の場合、接待交際費は制限があり、全額費用としては認められません。
しかし、企業会計上、接待交際費は全額費用となりますし、個人事業の会計においても、接待交際費は全額経費扱いです。

 

このように企業会計上や個人事業では費用と認められるものが、法人では認められないというケースがあるため、法人税の対象となる所得は次のような計算式となります。

所得=益金−損金

上記を企業会計の言葉に置き換えると、「利益=(収益−費用・損失)」となりますが、税法上認められない経費などが多いのでまったく同じ結果にはなりません。

 

そのため、法人税を計算するためには、一度会計上の利益を算出してから税法上の修正を加えるという作業が必要になります。

 

法人税と所得にかかるその他の税金の税率

法人の所得に対してかかる税金は、法人税だけでなく、「地方法人税」「法人住民税」「法人事業税」もあります。
それぞれの税率は、次のとおりとなっています。

 

法人税

法人所得に対して23.4%

 

地方法人税

法人税率の4.4%

 

法人住民税(都道府県によって違うので東京都23区の場合)

住民税は法人税率に対して以下の通りとなります。

標準税率 3.2%(都民税)、9.7%(区民税)
超過税率 4.2%(都民税)、12.1%(区民税)

※東京都では資本金や出資金の額によって税率が変わる超過税率を採用していますが、他の自治体は個人の住民税と同じように法人税割額(所得割額)と均等割額が採用されています。

 

法人事業税(東京都の場合)

所得の3.78%(地方法人特別税を含む)

 

表面税率と実効税率

法人関連の税率をすべて合計した税率の推移をみていくと、法人税にどのような傾向にあるかがわかります。

 

単純に合計する表面税率は次の算出方法となります。

 

表面税率=法人税率+(法人税率×地方法人税率)+(法人税率×住民税率)+事業税率

 

具体的に数字を当てはめると表面税率は次のように算出されます。

 

23.4%+(23.4%×4.4%=1.0296%)+(23.4%×16.3%=3.8142%)+3.78%=32.02%

 

しかし実際には事業税に関しては損金に含まれるので、その点を考慮して次の計算式で「実効税率」を算出します。

 

実効税率=標準税率/(1+事業税率)

 

実効税率=32.02%/1.0378=30.86%
実効税率の推移を見ることで、実際に法人に関わる税率を実質的に判断できます。
実効税率が年々下がっていれば、個人事業主が法人化するタイミングとしては適切ということになります。

 

赤字なら納税義務は基本的にない

赤字決済の場合でも、均等割の住民税などは通常通り支払わなければなりません。
しかし所得割の税金に関しては、赤字決算の場合、ほとんどの税金が納付免除となるので納税義務がなくなります。

 

また、黒字決済の場合でも、「繰越欠損金」がある法人や団体の場合は税金の支払いを免除されます。

 

繰越欠損金とは、事業年度終了時の赤字を次年度に繰り越せるシステムのこと。
繰越欠損金を利用すれば、ある年度に赤字決済をした場合、次年度以降が黒字決済であっても過去の赤字分が解消できるまでは法人税を納める必要がなくなるのです。

 

赤字の繰越には、次の要件を満たす必要があります。

 

1.事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度の欠損金であること
2.欠損金の生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出していること
3.欠損金の生じた事業年度以降連続して確定申告書を提出していること
4.欠損金の生じた事業年度にかかる帳簿書類を保存していること

 

上記をまとめると、青色申告を継続して帳簿類も保管していれば、9年間は赤字の繰り越しができます。
赤字決済により法人税が免除されている間は、銀行など金融機関への融資申し込みする場合に不利になってしまいます。

 

しかし、1回の赤字決算が影響して繰越欠損金による赤字が連続している場合は、実質的には黒字であることを証明できるので影響は少ないでしょう。
最初に赤字決算となった原因をすでに解消していることを説明できれば、融資審査でもそれほど大きな影響はありません。

 

赤字決算になっても法人税の支払いは免除される?

 

中小企業に対する優遇税制

法人は法人税法上「大法人」と「中小法人」に分けられ、中小法人には各種の優遇税制が多く適用されます。

 

法人税率は平成29年度で23.4%ですが中小法人には以下の税率が適用されます。
年800万円以下の所得について15%
800万円を超える所得があっても、超えた部分だけに23.4%が適用されるので、所得が低いほど優遇されることになります。

 

なお、公益法人や協同組合なども15%の優遇税率が提供されています。
これは平成31年3月31日までの優遇措置ですが、平成29年度の税制改正で2年間の延長が確定しています。

 

中小法人に該当する企業

中小法人は基本的に資本金や出資金が1億円以下の企業のことを言います。
しかし資本金1億円以下でも次の法人は中小法人に該当しないので注意しましょう。

 

1.相互会社
2.大法人(資本金又は出資金の額が5億円以上の法人)、相互会社等の100%子会社
3.完全支配関係(100%の出資関係)にある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人
4.投資法人
5.特定目的会社
6.受託法人

 

上記に該当したい中小法人には優遇税制が適用され、大法人と比べると法人税率が軽減されます。

 

中小法人に対する税率以外の優遇制度

法人税率の優遇だけでなく中小法人はい赤の優遇を受けることができます。

 

・欠損金の繰戻還付
・交際費課税の特例

 

欠損金は一般的に次の決算期に繰り越せられますが、中小法人の場合は前期に繰り戻して払いすぎた法人税の還付をすることができます。
欠損金が発生した次年度も赤字決算となる見通しで前年度が黒字の場合は、法人税を還付してもらうと還付金を事業に活用できます。

 

また法人は交際費を経費とすることが認められていませんが、中小法人には次の優遇措置があります。

 

・800万円までの交際費等の全額損金算入
・接待飲食費の50%の損金算入

 

中小法人は上記の優遇措置のいずれかを選択することができます。

 

まとめ

これから起業しようとしている人や個人事業を法人化したいと考えている人は、法人税の知識は頭に入れておきましょう。
とくに中小企業者に対しては優遇税制がありますが、期限が設定されている場合が多いという特徴があります。

 

常に最新の情報を取得して起業や法人化に役立てましょう。