ファクタリングにおける手数料について
資金調達方法は金融機関からの借入等いろいろありますが、借入をしないでできる調達方法としてファクタリングサービスがあります。
ファクタリングは簡単に言えば売掛債権を売却することです。
手数料がかかりますが、現金化が早くできるというメリットがあります。
ファクタリングを効果的に行なうには、やはり手数料が大きなポイントとなります。
今回はファクタリングの手数料に関して解説をしましょう。
ファクタリングの種類によって手数料が大きく違う
一般的に利用されているファクタリングは「一括ファクタリング」ですが、さらに「2社間ファクタリング契約」と「3社間ファクタリング契約」に分けられます。
それぞれの仕組みやメリット・デメリットを解説しましょう。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングの3社はA(売掛債権保有企業)、B(売掛先企業)、C(ファクタリング会社)の3社です。
それでは3社間の流れを説明しましょう。
- AはBに売掛金譲渡の通知をし、Bの承諾を得る。
- Aは売掛金をBに確認しCに伝える。CはBに売掛金を確認する。
- Cは売掛金を買い取り、Aに振り込む(手数料相場1%~5%)
- Cは売掛金全額をBから直接入金
債権譲渡契約はAとCの2社間契約ですが、Bに債権譲渡を通知することでCは契約者以外の第三者に対抗できます。
債権の買い取りをBが承諾しているので、CはBから直接回収でき、未払いの場合も請求することが可能なので、手数料は安くなります。
■3社間ファクタリングのメリット
・手数料が安い
■3社間ファクタリングのデメリット
・売掛先に売却の事実を知られるので、その後取引停止の可能性がある
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングは3社間ファクタリングのデメリットである売掛先に知られるということを回避したシステムです。
しかし、その分ファクタリング会社の保全が必要で、必要経費や手数料が格段に高くなります。
2社間ファクタリングの流れは次のとおりです。
- AとCは売掛金買い取り契約を締結。
- Cは手数料を差し引いてAに買取金額を支払う(相場15%~25%)
- AはBから売掛金を回収してCに振り込む。
ファクタリング会社はAが売掛金を譲渡したことをCに伝えていないので、直接Cから売掛金を回収できません。
そのためAを介して回収するしかないのでリスクが大きくなり、リスク回避のための保全策をしますが、その実費もAの負担となります。
債権譲渡特例法によって第三者への対抗手段として「債権譲渡登記」が認められているので、2社間ファクタリングでは登記が条件となることがほとんどです。
■債権譲渡登記費用
- 登録免許税7,500円(抹消1,000円)
- 印紙代200円
- 登録事項証明書500円
- 司法書士費用(登記・抹消各3万円+遠距離の場合の日当など)
実費は1万円程度ですが、司法書士への報酬を含めると10万円前後はかかると思いましょう。
■2社間ファクタリングのメリット
・債権譲渡が取引先に知られないので取引停止のリスクがない
■2社間ファクタリングのデメリット
・手数料相場が高く、登記費用もかかる
売掛金売却には「掛け目」がある
売掛債権譲渡の場合、売掛金をそのままの金額では評価せず、「掛け目」と言われる比率をかけて評価します。
不動産担保で銀行融資する場合も掛け目が存在していて、1,000万円の評価の不動産でも掛け目が80%であれば800万円までしか融資を受けることができません(掛目与信)。
これと同じように売掛債権の掛け目が80%であれば、500万円の売掛金額を400万円と評価し、さらに手数料や実費を支払うことになります。
2社間ファクタリングの受取金額は
500万円×80%-10万円(登記費用)-125万円(500万円×25%の手数料)=265万円
3社間ファクタリングの受取金額は
500万円×80%-25万円(500万円×5%の手数料)=375万円
いずれの場合もかなり目減りしてしまいますが、掛け目は一種のリスク回避なので売掛金を全額回収できた場合、掛け目で減った20%が戻るという契約もあります。
ファクタリング契約に掛け目が戻る条項があるかどうかをチェックすることも重要です。
ファクタリング業者の選び方
初めてファクタリングをする場合はある程度手数料が高かったり、掛け目も低かったりするのはやむを得ないでしょう。
ファクタリング業者のリスクも高いので最初から低い手数料をや高い掛け目を期待しないようにしましょう。
しかし、最低でも悪徳業者を避けることは、ファクタリングをする上での最低条件となります。
契約前にチェックすること
ファクタリング契約の前に手数料が相場と比べて極端に高かったり低かったりする業者は避けましょう。
2社間ファクタリングで30%以上や5%といった手数料は相場に比べてかけ離れています。
また登記費用も20万円もかかるようでは司法書士も含めて疑ったほうがいいでしょう。
ファクタリング契約はファクタリング会社が調査をして初めて契約するものなので、契約までには時間がかかります。
それをすぐに契約しようとする業者は怪しいと思って間違いありません。
さらに契約書を作成すらしない業者に至っては、悪徳業者であることは疑う余地がありません。
まともな業者はリスクを背負うので必ず契約書を作成します。
ファクタリング業者をチェックするポイント
悪徳業者を排除したところで、なるべく優良なファクタリング業者を見定めるチェックポイントをご紹介します。
- 手数料が相場の範囲内で極端な高低がない
- 手数料や掛け目の根拠を説明できる
- ファクタリングに関してていねいに説明をしてくれる
- 業歴が長い
優良な業者ほどあせって契約せずに取引先を充分に調査します。
悪徳業者までいかなくても売上の少ない業者は、知識も少なくとにかく契約に結びつけたいという気持ちが態度に現れるのはどの業種でも同じです。
まして初めての取引であれば自分が納得するまでファクタリングに関して質問してみましょう。
その質問にていねいに答えてくれる業者は優良な業者である可能性は高いでしょう。
ファクタリング業者との交渉
ファクタリングの手数料や掛け目は幅があるので交渉によって低くすることは可能ですが、最初から交渉するのはやめましょう。
最初の取引はファクタリング業者にとっても、取引相手は未知数です。
その相手がやたらと値切り交渉をしてきたとしたら疑念を抱くのが普通です。
取引を何回か重ねてファクタリングにも詳しくなり、事情がつかめた頃に交渉をしましょう。
ファクタリングと融資の比較
ファクタリングのメリットは現金化まで時間がかかる売掛債権を、すぐに現金化してキャッシュフローを改善できる点と売掛金の未収が回避できる点があります。
また一方でファクタリングは手数料負担が大きいというデメリットや取引に影響が出るというリスクもあります。
同じ資金調達方法として融資がありますが、ファクタリングと融資ではどちらにメリットがあるでしょうか?
金利・手数料の比較
500万円をファクタリングした場合と融資で借入した場合を比較してみましょう。
ビジネクストで500万円を6ヶ月借りた場合、実質年利は8.0%~18.0%ですが、利用限度額が100万円以上になると、年率8.0%~15.0%になります。
枠内でも一番高い年率15.0%として必要になる利息は以下のようになります。
5,000,000円×14.9%÷365×180日=369,863円
となります。
一方で掛け目と手数料がファクタリングでは235万円、3社間ファクタリングは125万円かかるので、はるかにビジネクストの方が負担が少ないことになります。
しかも、ビジネクストは500万円を全額使うことができますが、ファクタリングでは手数料を差し引いた金額しか使えません。
もちろん、ビジネクストでいきなり500万円の利用枠で使えるとは限りませんが、300万円でも手数料を差し引いた2社間ファクタリングよりも有利です。
リスクの比較
3社間ファクタリングは2社間ファクタリングよりも手数料負担が少ないので、掛け目部分が戻ってくればビジネスローンを利用するよりも効率が良くなります。
しかし売掛債権を譲渡していることが取引先企業にはっきりわかってしまうので、その後の取引ができなくなるリスクがあります。
その点融資で資金を調達することは取引先にはわかることがないのでリスクがありません。
銀行や公的機関の売掛債権担保融資との比較
銀行や公的機関でも売上債権担保融資を低金利で行なっているので、ファクタリングよりもビジネスローンよりも金利負担などははるかに少なくなります。
しかし取扱できる売掛債権の審査が厳しく審査通過が難しい上、融資できたとしても売掛債権を担保にしていることが業界に伝わると、いわゆる風評被害で信用力を失うリスクもあります。
リスクとスピードを考えるとビジネスローンが最も金融の資金調達には適しています。
まとめ
ファクタリングは売り掛け先に理解を得られれば3社間ファクタリングに限っては十分メリットがある資金調達方法です。
また売掛債権金額が大きく融資で補えない場合などには早く現金化する方法としては優れています。
しかし2社間ファクタリングに関してはあまりにも負担が大きく、他に手段がなくなったとき以外はあまりおすすめができない資金調達方法です。
2社間ファクタリングで売掛債権金額を減らすよりは、リスクのないビジネスローンをつなぎ融資として資金繰りを検討することをおすすめします。