経営者や自営者が利用できる事業者ローンとは
中小企業経営者や個人事業主が運転資金調達に利用できる融資のひとつに、ノンバンク系の事業者ローンがあります。
金利面では日本政策金融公庫や銀行融資の方が有利ですが、ノンバンク系は融資スピードが速いというメリットがあります。
今回は資金調達方法のひとつとしてノンバンク系の事業者ローンをご紹介しましょう。
事業者ローンの種類と特長
事業者ローンやビジネスローンと呼ばれている融資商品にもいくつか種類があります。
大きく証書貸付方式とカードローン方式に分けることができます。
証書貸付とは?
証書貸付は最も一般的な融資契約です。
証書貸付では、一度の契約で1回の借入しかできず、基本的に返済が終了するまでは次の借り入れはできません。
ただし返済が半分以上終了していれば、その残高を含めて新しく借り入れするということは可能です。
証書貸付では一つの契約で何度も借り入れすることができないので、返済計画が立てやすいというメリットがあります。
反面、複数の契約をすると返済金額の負担が大きくなるという点がデメリットになります。
カードローン方式とは?
カードローン方式では利用限度額を決めて発行されたカードで、何度も繰り返し融資利用できる金融商品です。
証書貸付と違い一度カードが発行されると、追加融資は審査不要でATMなどで簡単に借り入れができます。
返済方法もリボ払いを利用すれば、追加借入をしても毎月の返済金額はほとんど変わらないので返済しやすいという特長があります。
その代わり追加融資するたびに返済回数が増えていくので、金利負担も大きく返済回数も多くなります。
担保と保証人
事業者ローンでは不動産担保ローンや無担保ローンのどちらも融資商品として提供されているケースが多いので、借りる側の都合に合わせた商品を選べます。
また連帯保証人についても原則不要の場合が多く借りやすくなっています。
ただし法人申込の場合は必ず連帯保証人として法人代表者を付ける必要があります。
銀行などの金融機関と比べて審査面でも融通がきくという点も、ノンバンク系事業者ローンのメリットです。
ノンバンク系事業者ローンと金利
それでは具体的にどんな業者が事業者向けのローンを取り扱っているのか一覧でご紹介しましょう。
()内は実質年率
信販会社・クレジットカード会社系
- 楽天カード
楽天スーパービジネスローン(3.0%~15.0%) - オリエント・コーポレーション(オリコ)
CREST for Biz(6.0%~18.0%)、ビジネスサポートプラン(6.0%~15.0%) - 出光クレジット
事業者向け 不動産担保ローン(3.0%~9.8%) - アプラス
個人事業者専用ローン「ビジネスプラン」(14.4%~16.8%)
消費者金融会社
- ビジネクスト
ビジネスローン(8.0%~18.0%) - ビジネスパートナー
スモールビジネスローン(9.98%~18.0%) - セゾンファンデックス
VIPローンカード(6.5%~17.8%)/不動産担保ローン(2.6%~9.9%) - オリックス・クレジット
オリックスVIPローンカードBUSINESS(6.0%~17.8%) - プロミス
自営者カードローン(6.3%~17.8%)
上記の中では楽天スーパービジネスローンだけ楽天市場に出店している事業者向けとなっています。
それ以外の業者は特別な条件はなく、法人か事業者であれば申し込みができる融資商品です。
ノンバンク系事業者ローンのメリット・デメリット
ノンバンクの事業者ローンは
・審査スピードが速い
・審査基準は銀行と比べて低い
・個人事業主も対象の融資商品が多い
といったメリットがありますが、一方で下記のようなデメリットもあります。
・金利が高い
・融資金額が少ない
そのため返済期間はなるべく短くして利用し金利負担を少なくするのが原則的な使い方です。
事業者ローンの審査と総量規制
ノンバンク系の融資は貸金業法によって総量規制が行なわれています。
また、審査のやり方も銀行などの金融機関とは違いがあるので、その点も解説しましょう。
総量規制の対象
貸金業法では年収の1/3までの貸付制限を定めており、貸金業法の対象となるのは銀行以外で貸付を業務としている「貸金業者」です。
つまり融資やカードローン、カードキャッシングを行っている消費者金融会社・信販会社・クレジットカード会社などが対象です。
しかし、全ての融資が対象となるわけでなく、総量規制の例外と除外も規定されています。
総量規制の除外
- 不動産購入または不動産に改良のための貸付(そのためのつなぎ融資を含む)
- 自動車購入時の自動車担保貸付
- 高額療養費の貸付
- 有価証券担保貸付
- 不動産担保貸付
- 売却予定不動産の売却代金により返済できる貸付
- 手形(融通手形を除く)の割引
- 金融商品取引業者が行う500万円超の貸付
- 貸金業者を債権者とする金銭貸借契約の媒介
総量規制の例外
- 顧客に一方的有利となる借換え
- 緊急の医療費の貸付
- 社会通念上緊急に必要と認められる費用を支払うための資金の貸付
- 配偶者と併せた年収の1/3以下の貸付
- 個人事業者に対する貸付
- 預金取扱金融機関からの貸付を受けるまでの「つなぎ資金」に係る貸付
上記の中で例外の5に定められているように個人事業者の貸付は総量規制の例外となっているので、事業者ローンは年収の1/3という規制は受けません。
また、法人への貸付はそもそも貸金業法の規制対象外なので、法人への事業資金貸付についても総量規制は適用されません。
事業者ローンの審査方法
ノンバンク系の審査は基本的にスコアリング方式で行われています。
審査項目に点数を付けてそのトータル点数が一定の基準に達しなければ却下となります。
また、事業者ローンの審査でも個人信用情報機関の情報も参照しているので、クレジットやローンの事故歴があるとスコアリングは大きくマイナスとなります。
個人事業主や法人代表者は個人消費者と同様に上記の審査が行われます。
法人に関しても過去の倒産歴や銀行取引停止歴、法人カードや事業者ローンの利用歴が調査されます。
過去の利用状況に問題がなく、一定以上の収入と業歴があれば審査を通過すること自体は難しくありません。
また、赤字の法人や設立間もない法人でも赤字の理由や設立後の実績が良ければ審査を通過する可能性があります。
銀行などの金融機関と比べて審査に融通性がある点が大きなメリットです。
事業者ローン申込みに必要な書類
事業者ローンの申込みに必要な書類は一般的に下記の書類となります。
本人確認書類
・運転免許証
・パスポート
・健康保険証
収入証明書
・確定申告書、青色申告決算書
・法人決算書
・納税証明書
本人確認書類は上記書類のいずれかひとつの写しが必要です。
収入証明書に関しては融資商品によって、部数や追加提出書類が違うので事前に確認しましょう。
審査スピード
事業者ローンの種類によって審査スピードは大きく違います。
不動産担保を必要とする融資では担保評価や抵当権設定に時間がかかるので、申込みから融資実行までは数週間かかることもあります。
ただし審査結果は銀行に比べるとそれほど時間はかかりません。
特に無担保・無保証人の融資では即日融資が可能なケースもありますし、遅くても数日で審査結果が出ると考えていいでしょう。
銀行の事業者ローン
ノンバンクだけでなく銀行でも無担保の中小企業向け事業者ローンを取り扱いしています。
ただしほとんどの銀行では法人を対象としているため、個人事業主が利用できる事業者ローンはほとんどありません。
- 三菱UFJ銀行:ビジネスローン「融活力」
- 三井住友銀行:ビジネスセレクトローン
- 三井住友銀行:Webレポートローン
- 東京スター銀行:スタービジネスカードローン(個人事業主可)
- オリックス銀行:オーダーメイド型ファイナンス
銀行の事業者ローンの審査はノンバンクよりも厳しくなりますが、業歴の長い中小企業は低金利なのでノンバンクに申し込む前にトライしてみましょう。
無担保・無保証人が原則で低金利というメリットがあるので、申込みの優先順位は高くしましょう。
まとめ
中小企業経営車や個人事業主にとっては、事業者ローンは資金調達方法として使いやすいものです。
しかし、あまり事業者ローンに頼っていると金利負担がかさみ、キャッシュフローにも悪影響があります。
あくまで一時的な資金調達に活用することを心がけましょう。
資金調達方法はひとつに片寄らず、資金使途に応じて有利子負債にならないファクタリングや補助金・助成金など幅広く利用することが大切です。
もちろん事業ローンも適切な使い方をすれば、経営者にとっては便利な資金調達方法になるので上手に活用しましょう。