銀行融資の金利相場と計算方法
中小企業経営者や個人事業主は資金調達先として銀行融資を利用することが多いでしょう。
融資を申込むときに気になるのは、なんといっても金利です。
同じ銀行融資でも借入先の銀行によって金利が大きく違う場合もあります。
銀行融資の金利はどのように決められているのでしょうか?
今回は銀行融資の金利相場や計算方法について解説しましょう。
金利の基準
銀行も民間企業なので利益を追求するという点では、一般企業と変わりません。
そのため融資商品でも利益が確保できるように金利を設定するというのが基本です。
小売業では仕入れをして商品を販売することで利益を得ますが、同じように銀行も調達した資金を貸付して利益を得ます。
貸金業者は銀行から借入して資金調達しますが、銀行は不特定多数から普通預金や定期預金としてお金を預かることで資金調達ができます。
その資金を融資として企業や個人に貸付けることで利息を得て利益となるのです。
つまり、預金金利と貸付金利の差額が利益となるので、貸付金利は必然的に預金金利よりも高くなります。
さらに上限金利として利息制限法により年20.0%を超えることはできないという制限があるので、預金金利から20.0%の範囲内で融資金利が設定されます。
かなり大きな幅となりますが、これに利益確保という点や他行との兼ね合い、高すぎても借りる企業がなくなるという点を加味して基準となる金利が決まっています。
一般的に銀行が企業に貸付する場合、最も低金利の優遇レートをプライムレートと呼んでいます。
このプライムレートが現実的に銀行融資で適用される最低金利といえるでしょう。
プライムレートには短期プライムレートと長期プライムレートがあり、日銀のホームページでその推移が確認できます。
参考:日本銀行HP【長・短期プライムレート(主要行)の推移】
固定金利と変動金利
貸付金利には固定金利と変動金利があります。
固定金利は返済終了まで金利が変わらないので返済計画が立てやすいですが、比較的高金利となります。
変動金利は固定金利と比べて低金利ですが、返済中に金利が変動するので返済期間も変動するというデメリットがあります。
住宅ローンにも変動金利があり、この金利には基準金利という明確な基準があります。
住宅ローンの変動金利は短期プライムレートを基準として、「短期プライムレート連動長期貸出金利」の変動によって金利も変動します。
基本的には年2回金利の見直しが行なわれています。
固定金利の場合は長期間一定の金利なので、長期に安定した基準として償還期間10年の国債の流通利回りを採用しています。
住宅ローンだけに変動金利があるのではなく、リフォームローン、マイカーローン、教育ローンでも変動金利の金融商品があります。
ただし、フリーローンの中でも特にカードローンに関しては固定金利が一般的です。
事業資金を借入するときも固定金利と変動金利を選べる場合があるので、そのメリット・デメリットを考えて選択しましょう。
金利を決定する要素
銀行が融資の金利を決定する要素はいくつかあります。
特に事業資金が資金使途の場合は、同じ融資でも金利が大きく違うことがあります。
まずはどんな要因によって金利が変わるのかを解説しましょう。
銀行の規模
金利を決定する要素として銀行の規模も重要です。
小売業でも大企業は大量に仕入れをして単価を下げて安く販売することができます。
同じように銀行も規模が大きいほど金利を低くできる体力があるので、都市銀行と小規模の信用金庫では貸付金利に差があるのは当然といえるでしょう。
ただし、いくら低金利でも借りることができなければ意味はないので、借りやすい信用金庫にもメリットがあることは忘れないようにしましょう。
都市銀行は低金利になりますが、融資の審査は反対に厳しくなります。
信用金庫など小規模の金融機関は地元に密着しているところが多いので、むしろ地元の商店や自営業者は信用金庫を利用するといいでしょう。
貸付先の返済能力
融資を受ける企業や個人事業主の信用状況も貸付金利に影響します。
高い金利というのは貸倒れのリスクを考慮して高くしている面もありからです。
ノンバンクの金利が高金利なのも、銀行と比較すると貸倒れリスクが高いという理由が大きいのです。
銀行融資では取引先の企業の格付をしているので、融資に適用する金利も格付によって決まります。
格付が高いほど企業として安定性があり、返済能力も高くなるので低金利が適用されます。
つまり、銀行融資を低金利で借りるためには、長く取引をして信用を積み重ねることも大切です。
もうひとつ金利を下げる要素には担保を提供するという方法もあります。
返済能力と担保力があれば、金利引下げ交渉もしやすいので、担保も活用しましょう。
制度融資とプロパー融資
銀行では銀行が直接融資するプロパー融資以外にも、国や地方自治体の制度融資を取り扱うこともあります。
また、信用保証協会や民間の保証会社付きの融資も取り扱っています。
地方自治体の制度融資では利子補給などのメリットがあり、保証会社付きの場合は連帯保証人が必要なくなります。
ただしプロパー融資の場合は取引が長ければ金利交渉の可能性がありますが、制度融資では金利交渉の余地はほとんどありません。
また保証会社付きの場合は金利以外に保証料もかかるので注意しましょう。
どの融資制度を利用するのが得策かは、融資商品説明書で情報を収集したり、銀行の融資担当者に相談したりして決めましょう。
銀行融資の金利計算
銀行融資を受ける前に簡単に金利計算をしておけば、どれくらいの金利負担があるのかわかります。
また、金利差が具体的にどれくらい返済金額に影響があるのかを確認することもできます。
一括払い・分割払い
基本的に融資利率は年利(実質年率)で表示されています。
そのため毎月の利息を計算するには12ヶ月で割った月利で計算するか、もっと正確に計算するには日割りで計算します。
1ヶ月の日数が一定でないため日割り計算が最も正確な利息を算出できるからです。
▼一括返済
年利1.0%で1,000万円を借りで3ヶ月後(91日後)に返済する場合
1,000万円×1.0%÷365日×91日=24,931円
▼分割払い
証書貸付で借入期間を決めて12ヶ月の分割で返済する場合は、残高に対して金利をかけることになります。
初回の利息は借りた日から最初の返済日までの日数(例えば45日)となるので少し高くなります。
初回支払利息
1,000万円×1.0%÷365日×45日=12,328円
実際の支払はこれに元金を加えた金額となります。
元金は12回の均等にするので初回は833,337円、2回目以降は833,333円となります。
2回目以降の金利は残高にかかるので、次のように計算します。
2回目の支払利息
(1,000万円-833,337円)×1.0%÷365日×30日=7,534円
該当の月が31日の場合は31日で計算し、うるう年は366日で計算するとより正確になります。
リボルビング払い
カードローン方式の融資は何度も繰り返し借入するので、支払いやすいようにリボルビング払いが原則となっています。
基本的には分割払いの計算と同じですが、返済回数ではなく毎月の返済金額を決める点が少し違います。
金利9.0%のカードローンで100万円を借入、毎月の支払元金5万円の場合、利息は次のようになります。
初回の利息
100万円×9.0%÷365日×45日=11,095円
2回目の利息
(100万円-5万円)×9.0%÷365日×30日=7,027円
分割払いは支払を続けていくと利息は毎月少なくなりますが、リボ払いでは追加借入が可能なので、残高と利息が増えることがあります。
そのため、リボ払いでは追加融資を繰り返すと、永遠に支払が続く可能性があります。
低金利の銀行カードローンであっても、金利負担が大きくなるので、カードローンは計画的に利用しましょう。
事業者向け融資の金利の会計処理
銀行融資に限らず、事業のために借りたお金の金利は経費として処理ができます。
利息だけ支払っている場合は、利息を「支払利息」の科目で振り分ければいいですが、元金と利息を同時に支払う場合は分けて処理しましょう。
36万円の元本と4万円の利息をあわせて40万円支払った場合は次のように処理します。
借方 長期借入金36万円、支払利息4万円
貸方 普通預金40万円
銀行融資を受けると必ず返済予定表が発行されて、元金と利息、残高などがわかります。
経理処理には必要なので返済予定表は必ず保管しておきましょう。
住宅ローンの金利
住宅ローンは住宅だけではなく事業用の店舗や事務所の購入で利用することもあるでしょう。
高額な借入となるので住宅ローンの金利ついても知識を深めておきましょう。
住宅金融支援機構
住宅ローンを利用する場合、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)を利用するのが最も低金利となります。
住宅金融支援機構は政府系金融機関のひとつで、国民が住宅を取得する支援をしています。
しかし、住宅金融支援機構が直接融資するわけではなく、銀行などの民間金融機関が提携して融資を行なっています。
つまり、実質的には銀行融資ということになりますが、審査基準は住宅金融支援機構の基準に基づいています。
そのため銀行のプロパー融資による住宅ローンよりは審査が通りやすいといわれています。
住宅金融支援機構のフラット35は固定金利の住宅ローンとしては最も低金利で、銀行の住宅ローンよりも審査も通りやすいので、住宅ローンを利用する場合は最初に検討しましょう。
固定金利・変動金利の他に特約付変動金利型がある
住宅ローンの金利には固定金利と変動金利がありますが、変動金利にはさらに「固定金利期間特約付変動金利型」があります。
これは最初の5年間や10年間は特約固定期間として、固定金利を適用し、特約期間終了後は原則として変動金利を適用するしくみです。
固定金利の適用期間が終わっても、再度固定金利か変動金利を選択できるので、金利情勢にあわせた金利が選択できます。
金利相場が高金利のときに住宅ローンを利用する場合は、この変動金利を利用すると便利です。
まとめ
銀行の場合、事業融資については取引先の信用度によって金利が大きく違ってきます。
借りる側としては格付が上がると低金利で借りることができるので、銀行に対する信用度を高めることも必要です。
新規の契約はどの銀行でも金利条件は厳しくなるので、メインバンクを決めて取引関係を長く続けることが低金利への一番の近道です。
銀行融資は事業資金だけでなく、個人としても低金利で利用できる融資商品があります。
事業者としてだけでなく個人としても同じ銀行を利用して信用力をつけましょう。