クラウドファンディングの市場規模【2017年版】
クラウドファンディングは銀行融資に頼らずに資金調達できる方法として、日本でも年々市場規模が広がっています。
中小企業の資金調達方法としては銀行融資が一般的ですが、すべての運転資金を融資でまかなうことは困難です。
クラウドファンディングを含めて融資以外の資金調達手段を確保する必要もあります。
今回はクラウドファンディングに焦点をあてて、日本での市場規模の推移を確認してみましょう。
日本でのクラウドファンディングの市場規模
まずはクラウドファンディングがここ数年でどれくらい市場規模を拡大してきたのか、その推移から見てみましょう。
新規プロジェクト支援金額の推移
上記の表は2014年度から2016年度までのクラウドファンディングによるプロジェクト支援額の実績と2017年度の予測金額です。
ほぼ倍々で支援額が上昇していることがわかり、2017年度の予測額は1,000億円を超える金額となっています。
クラウドファンディングには種類がありますが、2016年度の内訳を見てみましょう。
支援金額の比率では圧倒的に貸付型の占める割合が高くなっています。
これは取扱件数とプロジェクト当たりの支援金額の高さによるものでしょう。
しかし購入型は支援額ベースでは8.4%にとどまっていますが、支援者数ではすべての型の中で最も多い50万人となっています。
その購入型クラウドファンディングも順調に推移していて、2017年度もさらに伸びることが予想されています。
2017年度クラウドファンディングの実績予測
2017年度下記グラフのとおり予測されています。
全体でも46.2%増という予測ですが、貸付型は46.8%増で全体の増加を牽引しています。
また購入型も認知度が高くなるに連れて支援額も増え、27.4%増となる予測です。
購入型クラウドファンディングは毎年安定した伸びを見せているうえ、プロジェクトの大型化も進んでいるため、今後も支援額は増えていくでしょう。
ファンド型と寄付型はそれほど変化がありませんが、株式型は2016年度の0.4億円から12億円と飛躍的な伸びがあり、今後期待されるクラウドファンディング型です。
国内初の株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームは2017年4月にサービスを開始した「FUNDINNO」となっています。
ちなみに2016年に発表された2016年度の総支援額は予測段階では47,787百万円でしたが、実際には74,551百万円となり予想比156%です。
そのため2017年度の実績も予想を上回る可能性があるでしょう。
日本のクラウドファンディングは世界規模ではまだまだ
日本以外のクラウドファンディングの規模は日本と比べてどのくらいなのでしょうか?
購入型クラウドファンディングの規模を同じ2016年で比較してみましょう。
・アメリカ 約900億円(占有率約20%)
・日本 約62億円(占有率約1.4%)
購入型クラウドファンディングだけで比較しても日本の占有率は1.4%で、アメリカと比べても7%弱にとどまっています。
これを考えると日本では人口を考慮しても、アメリカに遠く及ばない規模ということになります。
しかし、反対に考えるとまだ「伸びしろ」があるということになり、今後も大きな成長率が見込めることになります。
購入型クラウドファンディング
日本でも順調にプロジェクトの資金調達額が伸びている購入型クラウドファンディングについてご紹介しましょう。
購入型クラウドファンディングの仕組み
購入型はプラットフォームと呼ばれているインターネット上のサイトに起案者がプロジェクトを公開し、不特定多数の個人支援者(出資者)から資金を募る方法です。
支援者に対しては商品やサービスの提供による「リターン」が出資に対する配当となります。
購入型のプロジェクトには調達目標額が設定され、目標支援額に達した場合にのみプロジェクトが成立する「All or Nothing」、目標金額到達に関係なくプロジェクトが成立する「All In」という2つのタイプがあります。
All or Nothingは「ダイレクト型プロジェクト」や「即時支援型プロジェクト」とも呼ばれています。
購入型も一種の投資ですが少額でも支援することができ、見返りも新商品やサービスといった実用的なものが多く国内でも普及しつつあります。
見返りを求めない寄付型の支援額が伸びないのに比べて、購入型が順調に支援額を延ばしているのは、魅力的なリターンがその一因でしょう。
購入型クラウドファンディングはどんな資金調達向きか
購入型クラウドファンディングのプロジェクトには応援プロジェクトといった意味合いが強いものもあります。
音楽や映画といったジャンルでも好きなミュージシャンや映画作品を応援するプロジェクトも増えています。
しかし一般的な中小企業や個人事業者でも購入型を利用して事業資金を調達することが可能です。
特に「ものつくり」をしている中小企業は、新商品を開発するための資金を購入型クラウドファンディングで調達するとリスク回避にもなります。
基本的にダイレクト型プロジェクトでは調達期間が過ぎても資金調達できなければ、手数料も発生せず資金調達者にはリスクがありません。
そのため資金調達法としてのクラウドファンディングは中小企業こそ積極的に活用すべき方法です。
国内最大の調達額
購入型クラウドファンディングで国内最大の調達金額となったのは、Makuakeの掲載プロジェクトです。
電動ハイブリッドバイクのglafitは2017年7月に1.2億円の資金を調達しています。
これ以外にも骨伝導イヤフォンのプロジェクトも1億円を超え、ワイヤレス・イヤフォンも1億円近い支援金額を達成しています。
いずれも中小企業が開発しプロジェクトを立ち上げた成功例です。
こうした消費者のニーズにマッチした商品を開発できれば、中小企業でも充分にクラウドファンディングを活用できるということです。
クラウドファンディングのメリット・デメリット
クラウドファンディングにもメリット・デメリットがあります。
メリットを生かすためにはデメリットを踏まえてクラウドファンディングを利用することも大切です。
クラウドファンディングのメリット
クラウドファンディングのメリットをまとめてみたので、自社の事業に適しているかどうかを判断してみましょう。
・銀行融資とは違い事業者に対する審査はない
・法人・個人を問わずに利用ができる
・自己資金比率なども関係なく資金調達ができる
銀行融資ではもちろんお金を貸し付けるので、返済能力があるかどうかの審査が行われます。
クラウドファンディングでは不特定多数を対象として資金を集めるので、出資者の興味はリターンや事業に対してであって事業者の経営状態ではありません。
また、目標支援額に達しない場合は手数料も発生せず、失敗したときのリスクもないのがクラウドファンディングの大きなメリットです。
クラウドファンディングのデメリット
クラウドファンディングはリスクもほとんどなく資金調達方法としては完璧なようですが、もちろんデメリットもあります。
・事前準備を含めて資金が調達できるまで4~5ヶ月かかることもある
・プロジェクトが成立してから製品が完成しないと大きなトラブルになる
クラウドファンディングではいくら資金調達できるか事前にわからないため、全額調達できない場合も多く、他の方法と併用することが必要となります。
また、資金調達までの時間を考えると緊急な資金調達にはクラウドファンディングは向いていません。
クラウドファンディングはプロジェクトの成立、目標資金の調達が目的ですが、それで終了するというわけではありません。
きちんと支援者にリターンを提供するまでがプロジェクトとなるので、リターンについても充分に事前検討をしておきましょう。
資金を集めるには魅力的なリターンは不可欠ですが、実行できないようなリターンとならないようにしましょう。
まとめ
中小企業や個人事業主にとって、なるべく銀行融資に頼らずに資金調達をすることも重要です。
そのためファクタリングや手形割引、補助金・助成金の活用といった返済が不要の資金調達方法も活用しましょう。
製造販売業であればクラウドファンディングは、リスクの少ない資金調達方法として十分活用することができます。
また個人事業主であっても簡単に資金調達が可能な点も、クラウドファンディングが日本でも普及した理由のひとつでしょう。
ここ数年で日本でも市場規模が拡大し、まだ拡大の余地を充分に残しているクラウドファンドを資金調達の選択肢のひとつにしましょう。