事業主なら知って得する減価償却とは?分かりやすく徹底解説
減価償却という言葉は聞いたことがあっても、正確に説明できる事業主はあまり多くないかもしれません。
特に開業したばかりの事業主や中小企業経営者にとっては減価償却の意味と処理の仕方は確定申告前に充分理解する必要があります。
今回はなるべくわかりやすく実例を示しながら、減価償却について解説しましょう。
資産と経費の関係
減価償却について解説する前に経費と資産について、きちんと把握しておきましょう。
経費と資産の違い
事業に関してお金がかかることは必要経費として会計処理をすれば、所得税の対象から外すことができるので節税になります。
事業を運営する上で必要な仕入れ、消耗品、光熱費、家賃などは経費として、そのままの金額で経費として処理することができます。
一方で設備機械や不動産(建物)といった高額なものは一括で経費計上することはできません。
一度に経費として処理すると、設備投資した年度だけ極端に経費が多くなり、バランスが悪くなり場合によっては赤字となってしまいます。
そのため高額な設備は複数の年度に分けて経費計上することで平均的にならす必要があります。
経費としてそのまま処理できるかどうかは、金額によって明確に分けられています。
個人事業主の場合、白色申告者は10万円未満、青色申告者は30万円未満の固定資産であれば一括で経費計上することができます。
固定資産とは?
固定資産を簡単に表現すると「事業用として継続的に使用する資産」ということになります。
パソコンやTV、デスクから機械装置、事務所の建物も固定資産となります。
固定資産も経費として計上することができますが、10万円以上(青色申告の場合は30万円以上)の場合は分割で経費計上します。
固定資産は法律で「法定耐用年数」が定められています。
耐用年数は固定資産が何年で価値がなくなるかを示すものです。
詳細な計算方法は後述しますが、50万円の固定資産の耐用年数が5年であれば、毎年10万円ずつ5回の事業年度で経費計上するというのが基本的な考え方です。
ただし、経年劣化する固定資産、つまり使っていると価値が下がる固定資産が対象であって、同じ不動産でも建物は減価償却できますが、土地は対象となりません。
ちなみに土地と建物には固定資産税がかかりますが、固定資産税評価額は土地の場合3年に一度見直しがあり、建物の場合は経年減価を考慮して毎年補正しています。
減価償却できない固定資産とできない固定資産
ここで減価償却ができる固定資産とできない固定資産を具体的に示しておきましょう。
減価償却可能な固定資産
1.建物・設備機械・船舶・備品など(有形固定資産)
2.工業所有権・営業権・ソフトウェアなど(無形固定資産)
3.牛・馬・りんごの木など(生物)
減価償却できない固定資産
1.土地・借地権・骨董品など(経年減価しないもの)
2.建築中の建物
3.販売用機械などの棚卸資産
4.使用可能期間1年未満のもの、経費処理した10万円未満の資産など
土地や骨董品は評価額が下がることはありますが、毎年一定の割合で価格が下がるわけではないので減価償却はできません。
減価償却できない資産は売却するまで資産として計上することになります。
減価償却可能な資産は法定耐用年数が決まっているので、法定耐用年数表を参照することで確認できます。
参考:法定耐用年数表
減価償却の計算方法
減価償却の計算方法は定額法と定率法の2種類あり、固定資産によっては計算方法が決まっている場合もあります。
それではそれぞれの計算方法を具体的に解説しましょう。
定額法
基本的には建物を減価償却する場合は定額法しか選択できません。
平成28年4月1日以降に取得した「建物付属設備及び構築物」についても定額法だけとなります。
なお計算に必要となる償却率については下記を参照してください。
参考:定額法償却率表
「パソコン(耐用年数4年)300,000円、償却率0.25」の場合
▼定額法の計算方法
・1年目 300,000円×0.25=75,000円(減価償却額)
・2年目 300,000円×0.25=75,000円
・3年目 300,000円×0.25=75,000円
・4年目 300,000円×0.25-1円=74,999円
1年目は固定資産額225,000円として75,000円を償却資産として経費計上します。
2年目以降も同様に、前年度の固定資産額から75,000円を差し引いて処理しますが、4年目(最終年度)だけは固定資産額を1円残して処理します。
この1円は資産が残っているという意味の備忘価格として残し、破棄した場合などは固定資産廃棄損、事業に使うのをやめた場合は除却損などで処理します。
定率法
建物以外は定額法と定率法どちらで計算してもかまいません。
定額法と定率法の違いを理解して効率よく使い分けをしましょう。
定率法では定額法にはない「保証率」と「改定償却率」があります。
まず、初年度からは「償却率」を使用し、減価償却額が「償却保証額」に達した以降は「改定償却率」を適用します。
実際に計算してみましょう。
「パソコン(耐用年数4年)300,000円、償却率0.5、改定償却率1.0、保証率0.12499」の場合
▼定率法の計算式(平成24年4月1日以降取得した固定資産の場合)
300,000円×0.12499=37,497円(償却保証額)
1.1年目 300,000円×0.5=150,000円
2.2年目 (300,000円-150,000円)×0.5=75,000円
3.3年目 (150,000円-75,000円)×0.5=37,500円
4.4年目 (75,000円-37,500円)×1.0-1円=37,499円
平成23年の法改正によって定率法の償却率も改正されたので、平成24年月1日以降取得した固定資産については下記を参照してください。
定額法と定率法の使い分け
定額法で計算すると毎年同じ金額を減価償却できます。
一方で定率法では初年度が最も高額な減価償却費となり、年度が進むにつれて金額が減少していきます。
つまり、その年度になるべく多くの経費を計上したい場合には、定率法が便利です。
また少額資産であれば、それほど節税に影響がないので、定額法で安定した金額を償却する方がいいでしょう。
いずれにしても売上と経費のバランスを考えて適切な方法で減価償却しましょう。
特殊な減価償却
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、1/3ずつ3年に分けて減価償却することができます。
この場合定額法や定率法、耐用年数とは無関係に、単純に3分割して処理ができ、3回目に1円を残す処理も不要です。
また飲食店を開業する場合、賃貸物件を改装してオープンするということは一般的に行なわれていますが、この改装費用も減価償却する必要があります。
建物は賃貸人の資産ですが、改装部分は賃借人の資産となります。
そのため耐用年数をどうするかという問題がありますが、用途や材質で合理的に見積もった年数、あるいは賃貸期間のどちらかにすると決まっています。
賃借期間にしない場合は10年~15年の耐用年数となるのが一般的です。
車の減価償却
車両の購入に関しては付帯する費用が多いので、個別に解説しましょう。
減価償却に含む諸費用
車両本体価格は当然減価償却の対象となりますが、それ以外にもカーナビなどのオプション品、納車費用が含まれます。
・減価償却に含まない諸費用
・自動車税
・自動車取得税
・自動車重量税
・自賠責保険料
・登録費用(業者の代行費用含む)
・車庫証明費用(業者の代行費用含む)
以上の費用は減価償却せずに租税公課などで経費処理します。
自賠責保険に関しては3年分一括して支払いますが、まとめて一括で計上してかまいません。
また上記以外に「リサイクル料金」もかかりますが、預託金として計上し売却時には戻ってくるので相殺、廃車時には損金処理します。
特殊車両を除いて車の耐用年数は普通車で6年、軽自動車は4年です。
中古車の場合、耐用年数が過ぎているときは耐用年数の20%、それ以外は「(耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」を耐用年数とします。
6年の耐用年数で32ヶ月経過した中古車の場合は、(60ヶ月-32ヶ月)+32ヶ月×20%=34.4ヶ月≒2.8年となります。
まとめ
新規購入した資産も翌年には中古資産となります。
減価償却は資産価値を年数に応じて減価し、減らした分は減価償却費として損金処理するという仕組みです。
いつまでも取得額に課税すると、本来の価値以上に税金を納付することになるので、税制によって認められた節税方法ということもできます。
そのため減価償却をしないと所得税も固定資産税も多く納付することになります。
減価償却に関しての知識を深めて無駄な税金は支払わないように心がけましょう。