約束手形とは?

約束手形という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 

以前は企業間の取引では一般的だった約束手形は、現金が手元になくても支払いができる便利なシステムですが、最近では以前ほど利用されなくなっています。

 

しかし、今でも約束手形による取引は行なわれていて、受け取った手形は現金化することもできて便利です。

 

まだ手形取引をしたことがない経営者はこの機会に約束手形についての知識を身につけておきましょう。

 

 

約束手形の基礎知識

まずは約束手形のしくみや取扱方法など約束手形の基本について解説しましょう。

約束手形と小切手の違い

約束手形と同じように取引に利用される有価証券に小切手があります。
小切手と約束手形の大きな違いは現金化できるタイミングにあります。

 

小切手は銀行に持ち込みすればすぐに現金に替えることができますが、約束手形には期日が決められているのですぐには現金化できないという特徴があります。
小切手は振り出したときには当座預金に額面以上の金額がなければいけません。

 

しかし、約束手形は期日までにお金を準備すればいいので、手形の振出人にとっては時間的な余裕が生まれます。
これが約束手形のひとつのメリットです。

 

約束手形を振り出す前に必要なこと

約束手形は基本的にはだれでも振り出すことができますが、一定の条件があり、銀行に当座預金を開設しているという点です。

 

当座預金は普通預金を開設するのとは大きく違い、銀行の審査を受ける必要があります。
小切手や手形取引など信用取引に利用するため、一定以上の信用がなければ当座預金は開設できません。

 

反対に考えると手形が振り出せるということは、取引銀行から一定以上の信用を得ているということにつながります。
ちなみに手形を振り出す支払人を「振出人」、受け取る人を「受取人」と呼んでいます。

 

手形の期日

手形の振出日(手形を発行した日)から支払期日までの期間を「手形サイト」といいます。
手形サイトは長くても120日以内が一般的です。

 

それ以上長い手形サイトは受取人にとってはデメリットとなるので、あまり長い手形サイトの場合は事前に受取人に相談しましょう。

 

ちなみに手形サイトが210日の場合「台風手形」、10ヶ月後の場合は「お産手形」、1年後の場合を「七夕手形」と呼んでいます。
特別な名称をつけるほど、長期の手形は嫌われているので注意しましょう。

 

約束手形が不渡りになった場合

手形の支払期日に当座預金が残高不足であれば、決済ができないので手形は不渡りということになります。
手形不渡りは振出人の信用に大きな影響があるので注意しましょう。

 

手形不渡りが発生すると手形交換所から全国銀行協会を経由して、不渡りの事実が全銀行に伝わります。
1回の不渡りは警告という意味がありますが、6ヶ月以内にもう一度不渡りが発生すると一定期間銀行取引が停止となります。

 

取引停止の情報は対象となる金融機関だけでなく、次の団体にも情報が共同利用されます。

 

1.各地手形交換所
2.各地手形交換所の参加金融機関
3.全国銀行協会が設置・運営している全国銀行個人信用情報センター
4.全国銀行協会の特別会員である各地銀行協会

 

これによって当座預金も利用できなくなるので、取引先の信用も失い経営に大きな悪影響があります。
もちろん銀行融資も審査が通らなくなり資金調達も苦しくなるので手形不渡りだけは避けるようにしましょう。

 

受取手形の領収書

約束手形は現金ではありませんが、振出人から求められたときは現金と同じように領収書を発行します。
領収書の発行日付は支払期日ではなく手形を受け取った日付にします。

 

また、但し書きは現金を受領したときと同じように記載してかまいません。
しかし、約束手形を受け取ったということを明確にするために、手形を特定する項目を記載しておきましょう。

 

・手形番号
・手形の種類
・支払期日
・支払場所(銀行名)

 

上記の項目は最低でも記載しておきましょう。
手形で受け取ったことがわからない領収書の場合、万一手形が不渡りになったときに現金で支払ったと主張されても対抗できなくなるので注意しましょう。

 

約束手形の記載内容

約束手形は当座預金を開設した金融機関から取得します。
約束手形の表面には上から順に次の内容の記載欄があります。

 

支払期日 手形を現金化できる日付
支払地 振出人の住所地(都道府県と市区町村名)
支払場所 現金化できる銀行名・支店名
名宛人 「殿」と印刷した欄には受取人の氏名を記入
金額 改ざん防止に金額の前に「\」、後ろに「※、★」を付ける。手書きの場合は漢数字の前後に「金」「円也」を記入。
振出日 手形を振り出した日付
振出地 振出人の住所
振出人 法人の場合は法人名の他に代表者の肩書と代表者名。銀行印を押印。

 

手形金額が10万円以上の場合は、金額に応じて振出人が収入印紙を貼り、消印を押します。

 

印紙がなくても手形の効力はなくなりませんが、印紙税法違反となり本来必要な印紙の金額の3倍を支払わなくてはいけません。

 

手形の裏書についてはルールがあるので次に詳しく解説します。

 

手形の裏書

約束手形には裏面にも記載する事項があり、これを「裏書」と呼んでいます。
裏書は表面と同様に重要なのでルールを良く覚えておきましょう。

 

裏書の意味

約束手形の裏書は基本的にだれが、だれに対して支払うのかを明確にするためにあります。
支払う人を「裏書人」、受け取る人を「被裏書人」と呼びます。

 

また、約束手形は譲渡することができるので、譲渡した場合も裏書きするので複数の裏書ができるようになっています。
最終的な被裏書人だけが銀行で現金化することができます。
裏書は連続している必要があるので、日付は時系列でないといけません。

 

また、最初の被裏書人が2番目の裏書人になるといった連続性も必要です。
つまり、約束手形の譲渡履歴が裏書ということになります。

 

裏書の記載事項

裏書には次の項目を記載します。

 

1.「表記金額を下記被裏書人又はその指図人へお支払ください」(定型文)
2.日付(振出日・譲渡日)
3.住所・氏名(法人名・代表者名)捺印
4.目的(記載しなくても効力に影響はない)
5.被裏書人氏名(法人名)

 

上記1〜5までがワンセットで、4セット分が印刷されています。

 

被裏書人が未記入の約束手形を受け取った場合は、裏書きせずにそのまま譲渡することが可能です。

 

手形が不渡りになった場合、裏書人に請求することができますが、この裏書人は記載されているすべての裏書人が対象となります。

 

そのため裏書きせずに譲渡できるのであれば、万一の場合に責任を取る必要がなくなります。

 

 

約束手形のメリット・デメリット

約束手形には振出人、受取人の双方にメリット・デメリットがあります。
それらをよく理解してから約束手形を利用しましょう。

 

約束手形のメリット

振出人にとって約束手形のメリットには次のものがあります。

 

■支払延期のメリット
取引先への支払いに手形を使うことで現金を準備する時間を延長することができます。
もちろん手形振出には受取人の承諾が必要となりますが、手形も振り出さずに支払延長をお願いするよりは承諾を得やすくなります。

 

■金利がかからない
金融機関から借り入れをして現金で支払うと利息がかかります。
約束手形の振出には利息がかからないので、融資やローンを利用するよりもお得です。

 

一方で受取人にとってのメリットには次のようなものがあります。

 

■受取手形は現金化できる
支払の延長を口頭で承認した場合には、期日まで現金を受け取ることはできません。
約束手形を受け取ると金融機関や金融業者で手形割引や手形貸付によって現金化することが可能となります。

 

約束手形のデメリット

振出人にとってのデメリットは次のとおりです。

 

■手形のジャンプは信用を失う
期日にお金が準備できなくなった場合、いったん手形を戻してもらって新たに手形を振り出すことができます。
これを手形のジャンプと呼んでいます。

 

しかし、手形ジャンプをすることで取引先の信用を失うこともあり、手形ジャンプが認められなければ不渡りになるリスクもあるので気をつけましょう。

 

■手形不渡りは倒産の可能性もある
手形不渡りのペナルティはすでに解説したとおりですが、1回だけでも信用を失い、2回目で銀行取引停止になると倒産のリスクが高くなります。
長期間銀行取引ができなければ、融資も受けられず取引先からも敬遠されるので注意しましょう。

 

受取人のデメリットは次のとおりです。

 

■支払期日の管理が必要
約束手形の支払い期日が過ぎても手形の効力は失いません。

 

ただし支払い銀行で現金化できるのは支払い期日の当日を含む3営業日ということを忘れないようにしましょう。
そのため受取手形の支払期日はきちんとする必要があります。

 

なるべく前日に銀行へ持ち込んでおくようにしましょう。
なお期日から3営業日を過ぎると銀行では現金化できず、振出人から直接現金を受け取ることになります。

 

■不渡りのリスクがある
受取手形は不渡りになるリスクが常にあり、手形割引なども金融機関に断られることもあります。
口約束による期日の延長よりは安全ですが、約束手形にもリスクがあることは忘れないようにしましょう。

 

約束手形の勘定科目

最後に受取手形や支払手形の仕分けをするときの勘定科目を確認しておきましょう。

 

手形を振り出したときの仕訳

借方 仕入 100,000円
貸方 支払手形 100,000円

 

手形決済後の仕訳

借方 支払手形 100,000円
貸方 当座預金 100,000円

 

受取手形の場合は次のように処理します。

 

約束手形を受け取ったときの仕訳

借方 受取手形 100,000円
貸方 売上 100,000円

 

手形決済後の仕訳

借方 当座預金 100,000円
貸方 受取手形 100,000円

 

まとめ

約束手形を今まで利用していなかった経営者でも、利用するのはそれほど難しくないことがお分かりいただけたでしょうか。

 

仕入代金が不足している場合でも、約束手形を利用すれば資金繰りをする必要もなくなります。

 

ただし当座預金取引をするにしても、取引先に約束手形を振り出すにしても信用が問題となります。
スムーズに手形取引ができるように、信用力を付けることが大切です。

 

運転資金の調達を軽減するためにも支払手形を活用してみてはいかがでしょうか。