プロパー融資での金利交渉と相場
中小企業経営者が銀行などの金融機関から融資によって事業資金調達する場合、大きく分けて2つの方法があります。
ひとつは保証協会付き融資ともうひとつは銀行のプロパー融資です。
プロパー融資は銀行が単独で審査・貸付を行なう融資で、保証料がかからないことから低金利で借入できます。
プロパー融資の金利相場はどのくらいで、引き下げ交渉は可能なのでしょうか?
今回はプロパー融資における金利相場と引き下げ交渉について解説しましょう。
プロパー融資を受けるに
プロパー融資は銀行にとっては信用保証協会の保証付きでないため、リスクが高い金融商品となります。
そのため一般的には大企業向けの融資と考えてもいいでしょう。
しかし中小企業でも条件を満たせばプロパー融資を受けることは非可能ではありません。
利益がプラスであることは絶対条件
赤字決算であれば保証協会付き融資でも審査を通過するのは難しいので、黒字決算が続いていることがプロパー融資の条件となります。
会社設立からずっと黒字決算ということはありえないので、直近2~3期が黒字決算というのがひとつの目安になります。
プロパー融資では企業の格付けが重要となりますが、赤字決算があると格付けは簡単に下がってしまいます。
特に営業利益がマイナスになると、本業がうまくいっていないということになるので致命的です。
経常利益の場合は営業外費用が一時的に大きくなってマイナスになることがあります。
この場合、営業利益がプラスであれば一時的な要因を明確に説明することで、それほど評価は下がらないでしょう。
営業利益は常に黒字を保つようにしましょう。
銀行取引が長い
いくら経営状態が良好でも、まったくはじめての取引で、いきなりプロパー融資の借入をすることはできません。
銀行側から低金利のプロパー融資に切り替えるよう誘いがあった場合以外は、信用保証制度を利用して実績を重ねる必要があります。
銀行側としても決算書の内容も重要ですが、実際に借入してきちんと支払をしているという事実は大きな信頼になります。
また会社としての取引以外でも、代表者個人の預金取引、職域として従業員の給与振込口座等の取引も評価されます。
メインバンクとして長く取引している銀行でなければ、プロパー融資の取引は難しくなります。
プロパー融資のメリット
長く取引してまでプロパー融資を受けるメリットは何でしょうか?
銀行からの直接融資となるプロパー融資は、信用保証協会の保証料率が不要なので低金利となるメリットがあります。しかし、メリットはそれだけではありません。
「中小企業信用保険法」によって信用保証協会の1社あたりの保証限度枠が決められていて、無担保の場合は8,000万円(担保ありは2億円)が貸付限度となります。
しかし、プロパー融資はこの貸付限度に含まれないため、信用保証協会の枠に影響がありません。
つまりプロパー融資が利用できることで、信用保証協会の利用枠を確保できるメリットがあります。
またプロパー融資の審査が厳しいということは、審査を通過すれば信用力をアピールできることになります。
プロパー融資の利用実績は他行でも確認できるので、より条件が良い融資を受けられる可能性もあります。
これらのメリットがあるので、プロパー融資が利用できるように努力することには大きな意味があるのです。
プロパー融資の金利相場
銀行ではプロパー融資をどのような基準で決めているのでしょうか?
プロパー融資の金利相場と金利引き下げ交渉について解説しましょう。
貸付金利は4つの要素で決められる
銀行に限らずほとんどの金融機関では貸付金利を次の4つの要素によって決定します。
2.経費率
3.収益率
4.信用コスト
銀行の貸付資金の調達は預金ですが、普通預金や定期預金には金利がつくので、その金利が調達コストとなります。
経費は人件費や支店の運営費などで、収益率は銀行の利益ということになります。
1~3までは貸付先が大企業でも中小企業でも変わることがない固定された金利決定要素ですが、信用コストは貸付先によって大きく違います。
信用コストは簡単にいえば貸付先が倒産する確率ということになります。
倒産する確率が高ければ信用コストが高くなるということですが、信用コストを決定する要素がいくつかあります。
B)返済期間
C)担保提供、保証人、信用保証協会などの保全
つまり高い格付けの企業であれば、返済期間が短く、保全も十分あれば低金利で借りることができる仕組みです。
中小企業の場合は短期プライムレートを基準に貸付金利が決定されています。
金利を決定する要素の1~3までが短期プライムレートで、信用コストを加えた金利が実際の貸付金利になります。
短期プライムレートは都市銀行、地方銀行、信用金庫の順に高くなるので、借入する金融機関によっても金利は大きく違ってきます。
金利の引き下げ交渉は可能か?
金利を引き下げることができるのは、「信用コスト」の部分に限られます。
それ以外の部分は、いわば小売業でいう原価に相当するので、引き下げの対象とはなりません。
小売業の場合、取引全体で利益が出れば原価割れでも販売することはありますが、銀行では利益が出ない貸付は行ないません。
引き下げ交渉で対象となるのは信用コストだけなので、自社の信用力が金利引き下げに大きく影響することになります。
結論としては金利の引き下げ交渉は充分に可能で、むしろ引き下げ交渉を前提に日頃から銀行との取引を考えておくべきでしょう。
それでは具体的にどのように引き下げ交渉をするのか解説しましょう。
引き下げ交渉の方法
信用コストを低くすることが金利の引き下げにつながるので、その要素を個別に検討してみましょう。
A)企業格付け
格付けのランクがひとつ違うと貸付金利は0.125%違ってきます。
まずは自社の格付けがどの位置にあるのかを銀行担当者を通して把握しておきましょう。
格付けが上がるのは業績が良好なときなので、業績が良くなったタイミングで引き下げ交渉をするといいでしょう。
B)返済期間
返済期間は長いほど銀行のリスクが高くなるので、プロパー融資はなるべく短期返済で申し込みすると金利が低くなります。
既存の融資でも返済期間を短縮することで、引き下げ交渉が可能になります。
C)担保提供、保証人、信用保証協会などの保全
協会保証の融資は銀行金利が下がりますが、保証料が上乗せされるので金利面ではそれほど引き下げにはなりません。
むしろ実績を積み重ねて信用力を付けるために利用しましょう。
不動産担保の提供や連帯保証人の個人保証は、金利を引き下げる要素となるので活用しましょう。
プロパー融資のデメリット
プロパー融資にはメリットもありますが、デメリットもあるのでその点をよく理解してから利用しましょう。
プロパー融資は審査後も厳しい
プロパー融資は銀行が全面的にリスクを負うので、審査が厳しいのはもちろんですが、審査後も融資を受けている限りは厳しい監査があるのが現実です。
銀行側としては倒産されては困るので、毎回決算期には決算書や資料の提出が求められます。
決算の内容によっては改善策も求められるので、資料作りなどで余計な手間がかかることもあります。
低金利だけが目的でプロパー融資を受けるのであれば、日本政策金融公庫や自治体の制度融資も検討してみましょう。
これらの融資は中小企業対策を趣旨としているので、銀行プロパー融資よりは審査が通りやすいメリットがあります。
高金利でも少額であればメリットがある
銀行プロパー融資は審査が厳しいので審査期間も長くなるというデメリットがあります。
そのため緊急のつなぎ資金などが必要な場合には、消費者金融系のビジネスローンのほうが使いやすいこともあります。
ビジネスローンは高金利ですが短期で少額の利用であれば実際の金利負担額はそれほど大きくありません。
ただし、銀行によってはビジネスローンを利用しているだけで、プロパー融資の審査に不利になることもあるので注意しましょう。
まとめ
銀行のプロパー融資のメリットや金利についてお分かりいただけたでしょう
経営者自身がそのメリット・デメリットを理解した上でプロパー融資を活用しましょう。
しかし、プロパー融資は審査基準が高く中小企業でも優良企業だけが対象となります。
小規模事業者の個人事業主やベンチャー企業は格付けの対象にもならないのが現状です。
その場合でもプロパー融資以外の借入先や資金調達方法は数多くあります。
自社に見合った資金調達方法を幅広く活用して効率よい資金繰りをしましょう。