不動産担保ローンの審査について
銀行に限らずノンバンク系金融会社でも不動産を担保にした融資を取り扱ってい
不動産担保を提供することで融資はどのように有利になるでしょうか?
また、不動産担保ローンの審査は無担保融資に比べてどのような違いがあるでしょうか?
今回は不動産担保ローンの審査について解説しましょう。
不動産担保ローンと無担保ローンの違い
まずは不動産担保ローンと無担保ローンの融資申し込みでは、どのような違いがあるのかを解説しましょう。
金利の違い
不動産担保ローンと無担保ローンの大きな違いとしては金利があります。
不動産に限らず担保提供することで金融機関のリスクが減少するので、不動産担保ローンは無担保ローンに比べて金利が低くなります。
例えば日本政策金融公庫の無担保と不動産担保提供の基準金利を比較してみましょう。
無担保の基準金利 | 年率1.81%~2.40% |
---|---|
担保提供の基準金利 | 年率1.16%~2.35% |
日本政策金融公庫の場合はもともと低金利なので、不動産担保を提供しても大きく金利が下がることはありません。
しかし、高額な借入の場合は少しでも低金利であれば実質的な負担金額は大きく軽減されます。
さらに消費者金融の場合は不動産担保を提供することで、さらに大きく金利を軽減することができます。
事業者向けローンを取り扱うAGビジネスサポートの場合、無担保ローンは、年率3.1%~18.0%です。
不動産担保ローンは、年率2.49%~14.8%と3.2%も低くなるので、メリットが大きくなります。
諸費用の違い
無担保ローンの場合、諸費用は印紙代の実費程度で、事務手数料以外ほとんどかからないといっていいでしょう。
しかし、不動産担保ローンは不動産に抵当権や根抵当権を設定するため、設定費用がかかります。
これらの登記費用は融資を受ける側の負担となるので、設定金額が大きいほど高額な費用となります。
不動産担保ローンを利用する場合は、抵当権設定費用がかかることを忘れないようにしましょう。
審査の違い
審査の面でも無担保ローンと不動産担保ローンでは違いがあります。
融資審査では返済能力とリスクが考慮されますが、不動産担保ローンではリスク面が軽減されます。
不動産を担保にすることで、もし返済が滞っても不動産を処分して返済に充当することができます。
そのため、不動産の評価が高く借入金額よりも価値が高いほどリスクはほとんどなくなります。
しかし、融資はあくまでも借りた金額を定期的に支払うことが重要であり、いくら担保価値が高くても返済能力がほとんどなければ審査は通過しません。
不動産担保はあくまでも保全のためにあるからです。
不動産担保ローンの審査については次で詳細に解説しましょう。
不動産担保ローンの審査
不動産担保ローンでも無担保ローンでも審査基準はほとんど変わりありません。
違いは不動産の担保評価にあります。
不動産評価
担保となる不動産評価は不動産担保ローンにとっては重要な審査項目のひとつです。
不動産の評価方法にはいろいろありますが、担保評価としては実勢価格を基準にすることはありません。
将来的に不動産の価値が下がることも考慮して独自に評価するのが一般的です。
銀行などの金融機関では不動産鑑定士に依頼して評価しますが、さらに掛け目と呼ばれる係数をかけて最終的な融資額を決定します。
掛け目は評価金額にかける70%~90%の係数のことです。
つまり不動産評価が1,000万円であっても70%の掛け目をかけた700万円が最大の融資限度額となります。
ただし、融資可能額は担保評価だけで決まるわけではありません。
そのため700万円の融資額が確保できるということではなく、返済能力を考慮して借入希望額が下がる場合もあるので注意しましょう。
また対象となる不動産物件は土地・建物となりますが、流通性があることが条件となります。
同じ土地でも山林などは対象にならず、宅地など換金性が高い土地に限られます。
また、土地だけの場合は対象となる可能性はありますが、建物だけの場合はほとんど対象にならないと考えましょう。
税金の滞納
無担保ローンでも税金の滞納がないかどうかを納税証明書によって確認されることがありますが、不動産担保ローンにとって税金の滞納は無担保ローン以上に重要な意味があります。
詳細は後述しますが、抵当権には設定順位があり設定した日付によって優先順位が決まります。
順位が上であるほど優位になりますが、税金の徴収には先取特権(さきどりとっけん)があります。
つまり抵当権の設定順位に関係なく、税金の滞納があれば融資金よりも先に税金に充当されてしまうのです。
そのため申し込み時点で税金の滞納があれば、不動産担保ローンでは審査を通過することはできません。
抵当権設定順位
基本的に債権者は平等なので、ある債務者に100万円を貸付している債権者が2名いた場合、債務者の資産が100万円しかなければ50万円ずつ返済してもらうのが原則です。
しかし、抵当権に関してはこの原則の例外となっていて、抵当権の設定順位にしたがって弁済を受ける権利があります。
さらにすでに解説した通り先取特権も存在するので、複雑な権利関係になることがあります。
住宅ローンの場合は抵当権の設定順位が1番でなければ融資を受けることはできません。
しかし、不動産担保ローンの場合は設定順位が2番でも融資は可能です。
ただし、抵当権設定順位が第2位のときは、1番は住宅ローン以外認められないのが一般的です。
特に銀行などの金融機関では、ほかの金融機関の抵当権が先順位にあると、審査を通過する可能性が低くなります。
これに対してノンバンク系の不動産担保ローンでは、第3位以下でも融資可能な場合がほとんどです。
審査基準の基本は返済能力
不動産担保ローンであっても返済能力や安定性が劣る場合は、審査を通過することはできません。
・年収(法人所得)
・事業年数
・資金使途
・事業計画書(事業性融資の場合)
・他社借入・支払い状況
上記の審査項目は無担保ローンと同じように審査されますが、不動産担保という保全があるので弱い部分があっても審査を通過する可能性はあります。
しかし、他社の利用状況で延滞があるなど、無担保ローンでもすぐに却下されるような理由があれば、不動産担保ローンでも審査は通過しないと考えましょう。
不動産担保ローンの審査期間
無担保ローンと比べると不動産担保ローンの審査期間は多少長くなります。
無担保ローンにはない不動産評価があるからです。
また、必要書類も多くなるため融資申込者が書類を準備する時間もかかります。
さらに、抵当権の設定手続きにかかる時間もあるので、融資実行までの期間も長くなります。
無担保ローンの審査期間よりも1週間程度は長くなると考えておきましょう。
まとめ
会社であっても個人事業主であっても不動産を担保にすることで、融資を受けやすくなります。
もちろん融資金額や返済総額と収入のバランスが重要ですが、それ以外の部分が多少弱くても金融機関のリスクが軽減されるため通りやすくなるのです。
事業性資金調達の場合、根抵当権を設定することで繰り返し融資を受けやすくなるというメリットもあります。
担保提供できる不動産を持っている場合は積極的に資金調達に活用しましょう。